2013 Fiscal Year Annual Research Report
ニューベキアの複葉におけるフラクタル構造のモデリング
Project/Area Number |
12J10320
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
中益 朗子 京都産業大学, 総合生命科学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 分岐構造 / 複葉 / 異形葉 / 表現型可塑性 / 環境応答 / 反応拡散パター |
Research Abstract |
これまでに、葉の縁で繰り返しの周期パターンを形成し、パターン依存的な葉縁の変形を起こす機構によってシロイヌナズナの単葉の鋸歯がおこることが知られていた。そこで、同じしくみを用いて複葉の分岐構造が説明できることをこれまでに示していた。当該年度は、さらに研究対象のRorippa aquaticaで観察される葉の表現型の多様性が、「基部からの距離依存的な制御」に起因する可能性をシミュレーションにより示唆した。シロイヌナズナの知見では単葉の鋸歯構造を、葉縁における繰り返しパターンに加え「基部からの距離依存的な制御」を組み合わせることで説明していた。複葉においてこの効果を加えても、分岐構造の形成には影響を与えないし、むしろ実際の植物で見られる複葉の特徴(分岐構造の非対称性や分岐数の分布など)をよく再現する事が分かった。 また、人為的に栽培条件に操作を加えた際の葉の表現型も説明可能である。具体的には、温度の移行実験(単葉形成条件から複葉形成条件への移行、またはその逆)における移行葉を単葉、複葉をシミュレートするパラメーターを切り換える事で再現できた。これらの事から、モデルの正当性が強く示唆された。さらに、この「基部からの距離依存的な制御」の効果の実在を検証するために発生に伴う遺伝子の発現量の変化を調査中である。小葉形成には葉の成熟が関わる事が知られているが、発生に伴い葉の成熟の抑制に関わる遺伝子の発現は相対的な減少が見られ、逆に成熟の促進に関わる遺伝子においては相対的な増加が見られるものが存在した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
様々な表現型の共通の基本原理として繰り返しパターンとの関わりが示されているが、その繰り返しパターンの形成に関わる分子的実体の解明が遅れている。葉の多様性が生じる仕組みについて背後にある繰り返しパターンの性質の変化で生じるものと考えてきたが、パターンの性質には影響を与えない別の位置情報が起因している可能性が高いことが分かってきた。したがって、ニューベキアの葉の多様性が生じる仕組みについて研究を進めても、繰り返しパターンの実体解明には結びつかないことが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
分子系統学的解析により、ニューベキアの名称がRoripa aquaticaに変更。 これまでの研究から、ニューベキアの葉の多様性が生じる仕組みについて研究を進めても、背後にある繰り返しパターンの実体解明には結びつかないことが分かった。これは研究計画を進めるうえで大きな問題であるが、繰り返しパターンの性質の違いによって葉型の多様性を生じていると考えられる植物が見つかっている。今後はこの植物についても研究をすすめ、葉形の決定に深く関わる繰り返しパターンの実体解明に努める予定である。
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Research Products
(5 results)