2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J10359
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
松井 崇 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 特別研究員(SPD)
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Keywords | 運動 / 脳グリコゲン / ドーパミン / 低血糖 / 神経活動 |
Research Abstract |
私どもは、低血糖を伴う長時間運動時に皮質、海馬など運動に関与するとされる脳部位のグリコゲンが約50%減少し、運動後には超回復すること、更に、トレーニングが皮質と海馬のグリコゲン濃度を筋同様高めることも確認した(Matsuiら、J Physiol、2011;2012)。これらは、運動時、脳グリコゲンが筋同様に利用され、その後の超回復を基として、トレーニング適応を起こすことを初めて示した知見である。 しかしながら、上述の長時間運動時の脳グリコゲン減少は低血糖と同時に生じていたことから、分子基盤の検討モデルとしては適さない。低血糖はそれ自体が脳グリコゲン減少を引き起こすことから、低血糖を伴う長時間運動時の分子基盤を検討しても、それが低血糖によるものなのか、運動による脳神経の活性化によるものなのかは不明だからである。したがって、運動時の脳グリコゲン代謝の分子基盤を検討するためには、低血糖と無関係な運動誘発性の脳グリコゲン減少モデルが必要になる。断眠や感覚刺激などの低血糖を伴わない脳神経活性化モデルでも脳グリコゲンは減少することから、運動は低血糖と無関係に脳神経を活性化させることで脳グリコゲンを減少させる可能性があるが、果たしてどうか? 本年度は、運動時の脳グリコゲン減少に低血糖は必須でないことを見出し(実験1)、低血糖と無関係に脳グリコゲンを減少させるトレッドミル走運動モデルを確立した上で(実験2)、運動強度依存的な海馬グリコゲン減少の分子基盤にドーパミン作動性機構が関与する可能性を見出した(実験3-1)。しかしながら、ドーパミン作動性の海馬グリコゲン分解は3種類のドーパミン受容体(D1、D2、D4)のうち、どの受容体を介すのか?(実験3-2)、運動強度依存性海馬グリコゲン利用にドーパミンは関与するか?(実験3-3)は不明のままである。来年度は、これらについて検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、運動時の脳グリコゲン減少に低血糖は必須でないことを見出し(実験1)、低血糖と無関係に脳グリコゲンを減少させるトレッドミル走運動モデルを確立した上で(実験2)、運動強度依存的な海馬グリコゲン減少の分子基盤にドーパミン作動性機構が関与する可能性を見出した(実験3-1)。 当初は実験1を1年目、実験2を2年目、実験3を3年目に行う予定だったが、初年度に実験1、2を完遂し、実験3-1も終えることが出来た。したがって、当初の予定以上に進展したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように、運動強度依存的な海馬グリコゲン減少の分子基盤にドーパミン作動性機構が関与する可能性を見出した。しかしながら、ドーパミン作動性の海馬グリコゲン分解は3種類のドーパミン受容体(D1、D2、D4)のうち、どの受容体を介すのか?(実験3-2)、運動強度依存性海馬グリコゲン利用にドーパミンは関与するか?(実験3-3)は不明のままである。来年度は、これらについて検証するため、実験3-2、3-3を遂行する予定である。 もし、想定通りに、ドーパミン作動性機構を介した運動強度依存的海馬グリコゲン利用が証明出来れば、運動時の脳に利用されるエネルギー基質には、これまで考えられてきた血中のグルコースや乳酸のみでなく、新たに脳内のグリコゲンもあることが決定的になる。これまで報告されてきた運動による海馬機能向上の新たなメカニズムとして、ドーパミンとグリコゲン由来の乳酸が注目されるだろう。
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