2012 Fiscal Year Annual Research Report
うつ病罹患者の心理援助へのアクセスを改善するための臨床心理学研究
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12J10399
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
梅垣 佑介 東京大学, 大学院・教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 援助要請 / うつ病 / 抑うつ / サービス・ギャップ / 援助資源マッチング |
Research Abstract |
うつ病・抑うつについては、認知行動療法などの心理社会的援助の有効性のエビデンスが蓄積されている一方、多くの者が適切な援助サービスを受けられていないサービス・ギャップの問題が指摘されている。本研究課題では、うつ病罹患者の心理社会的援助に対するアクセスを改善するための知見の蓄積を目的とし、(1)当事者の援助要請行動の促進、(2)新しい形式での援助の提供、(3)被援助の継続、という三つの観点から研究を行った。それぞれの観点における研究成果として、(1)については援助要請の前提となる問題への認識が生じるプロセスについて先行研究のレビューを行った(梅垣,2013)。また、援助要請の妨害要因と考えられる楽観的認知バイアスを検討するため大学生を対象とした質問紙調査を実施し、認知バイアスが生じるメカニズムを自尊心脅威理論と衡平理論の観点から考察した(梅垣・木村,2012)。(2)については、インターネット上での検索行動がうつ病・抑うつに関する被援助のニーズを予測できる可能性を検討した(梅垣・末木,2012)。また、諸外国におけるインターネットを用いた援助サービスをレビューし、日本での展開可能性を考察した(梅垣・末木・下山,2012)。(3)については、必要とする者に継続的に援助を受けてもらうために、動機づけ面接の理論とその根本にある自己決定理論に着目し、それらが被援助継続に及ぼす影響を検討した(州崎・末木・松田・野中・高山・梅垣・下山,印刷中;末木・梅垣,2013)。これらの研究結果から、当事者が援助要請をする前にどのように問題を認識するか、インターネット上の検索行動は援助ニーズを予測できるか、援助を受け続けてもらうにはどうしたらよいか、といった点について知見が蓄積され、うつ病・抑うつにおけるサービス・ギャップ改善のための示唆が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
雑誌論文への掲載が多く実現したことが第一に挙げられる。平成24年度に計画していた2つの研究のうち、研究1は予定通り論文発表が完了し、研究2については投稿中(審査中)である。それらに加え、複数の研究をさらに進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、援助要請行動を促進するための個人・社会的要因の検討にとどまらず、継続可能な援助システムの構築、インターネットを利用した援助サービスへのアクセシビリティの改善可能性といった、従来の研究の方法論にとどまらない検討を行うことで、当事者の援助要請行動の促進にとどまらず、適切な人に適切なタイミングで適切な援助を提供する、というより臨床的に妥当な形での検討を行う予定である。
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Research Products
(12 results)