2012 Fiscal Year Annual Research Report
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12J10408
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菊地 信義 東京大学, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 教育の効果 / 世代間移転 / プログラム評価 / 教育の経済学 / ミクロ計量経済学 / ノンパラメトリック |
Research Abstract |
平成24年度は主に、バウンド分析による親の教育の因果効果の推定と、次年度以降のより詳細な分析のためのデータ整備という二つの課題に取り組んだ。 (1)バウンド分析 日本の個票データを用いて、親の最終学歴の子供の教育年数に対するAverage Treatment Effectをノンパラメトリックにバウンド推定した。その際、Monotone Treatment Response, Monotone Treatment Selection, Monotone Instrumental Variablesの仮定をおいて、より意味のある推定値を求めた。現在までの分析結果は、以下の通りである。三つの仮定を同時においた下での、最もタイトな因果効果のバウンドの上限は、外生性を仮定した場合の推定値を下回ることを示した。これは、真の因果効果の大きさと比べ、単純な回帰分析や平均の差から得られる推定値に上方へのバイアスがあることを示唆している。日本の先行研究では、外生性の仮定を暗に置いているものが多い。それらの推定結果が、真の因果効果とは異なるかもしれないことを示した点は意義があるといえる。 (2)データ整備 本研究計画では、バウンド推定での結果とそれ以外の手法による推定結果の比較を予定している。因果効果を推定する手法の一つとして操作変数法があるが、日本では操作変数として使用可能な変数の情報を、電子データとして入手することが困難である。そこで、大学進学に関する意思決定の操作変数の候補として、全国の国・公立大学の入学定員、入学金、授業料、及び、県別の平均月収、有効求人倍率、の公表データを数十年分電子化し、分析用に整備する作業を行った。この作業は、次年度の実証研究の基礎となるため重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、母親の教育あるいは出産の内生性の問題のいずれか一つに対処した上で、因果効果を推定することを大きな目標としていた。現在までに、教育の内生性の問題を扱い、母親の教育の因果効果をバウンド推定できたことは目標達成といえる。加えて、母親だけでなく、父親の教育の世代間効果の推定も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の四点について、さらに分析を進めることで研究課題の推進を目指す。 1)子供の性別によって、親の教育の効果が異なるかについて分析する。 2)子供の生まれた年代によって、教育の世代間効果の大きさに違いがあるかを明らかにする。 3)最終学歴が、子供を持つことそのものに対して影響を与えるかについて分析を行う。 4)母親の教育、出産の内生性の問題をまとめて考慮し、世代間効果のバウンド推定を行う。
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