2012 Fiscal Year Annual Research Report
1910年代の中独関係:多元的国際環境の下での双方向性
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12J10530
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
小池 求 成城大学, 大学院・法学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 中独関係 / 東アジア国際関係 / 中国外交史 / 辛亥革命 / 第一次世界大戦 |
Research Abstract |
平成24年度の本研究の課題は、(1)辛亥革命(1911)から第一次世界大戦中の中国の対独参戦(1917.8)に至る中独関係の全体像と特徴を先行研究や公刊史料から把握すること、(2)大戦中の中独関係に関する個別具体的なトピックを取り上げ、それについて検討を加えることであった。関連する資料は、ドイツ(8.15・9.13)、上海(12.27・12)、台北(3.15・23)において、それぞれ調査・収集を行った。 (1)の課題に関しては、東京理科大学池田嘉郎准教授の出版計画への寄稿論文を通じて、時間軸を清末から1921年の中独協定締結まで広げて、不平等条約改正の文脈から中独関係を概観した。そこから見えてくるドイツの対中政策の重点は、在華権益の確保と中国を含む他国と「平等」な通商活動の維持にあった。逆に言えば、中国はドイツの在華権益の処理方法次第で、ドイツの行動を規制することが可能であり、大戦は中国にその処理の自由裁量範囲を拡大させたといえよう。 (2)の課題に関しては、「中国の中立維持」と「主権維持」、「ドイツの在華権益確保」という3つの要素を設定し、(1)大戦勃発直後の中国の中立政策、(2)日独青島戦争前後の山東問題、(3)中国の対独断交に関する3つ時期の交渉を概観した。(1)の時期であれば、中独双方にとって、3つの要素は同等のものであったが、(2)の時期では中国にとって、山東問題により、中立と主権維持の間で揺れ、(3)の時期に主権維持(山東権益回収)重視に転換した。ドイツは(2)・(3)の時期においても、在華権益確保の前提条件が中立であり、場合によっては主権に配慮した対応策や反政府グループを支援することで、中立を維持させようとした。中国の重心の変化とドイツの一貫性は、列強、特に日本の影響を考える必要があり、両国間の交渉も二国間ではなく、多国間関係の中で行われた。ただし、断交に至るまで、ドイツに有利な戦局や中国国内のドイツに好意的なグループの存在が、ドイツに対中交渉の余地を与えていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の最大の課題は上記(1)の課題であり、それについては当該時期の中独関係の全体像と特徴を把握することができた。(2)の課題については、各時期の特徴とその変遷を分析した点、分析の中心となる資料の多くを収集できた点では満足すべき成果を挙げた。今後これらに関してはより詳細な検討を加えて、文章化していく。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は本年度に分析した中独関係の全体像・特徴を作業仮説とし、大戦中の両国関係について、昨年度収集した中独双方の資料を分析するだけではなく、日米の資料をも加え、日米両政府が中独関係の展開をどのように理解し、対応したのかを解明することで、より立体的に各時期の問題や特徴を考察し、論文として発表していく。 また、本研究における3つの時期区分のうち、すでに第3の時期である大戦中に関しての資料調査を行ったが、第1の時期である辛亥革命期(1911.10・12.3)と第2の時期である哀世凱政権の確立期(12.3-14.8)に関しては、2013年9月以降のドイツでの在外研究時に関連資料を収集する予定である。その前に、辛亥革命時期に関して国内で調査を行うほか、訪独以前に予定している北京での資料調査を行い、在外研究に備える。
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Research Products
(4 results)