2013 Fiscal Year Annual Research Report
自殺の定量的分析 -経済状況と自殺の関係について-
Project/Area Number |
12J10541
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松山 早紀 東京大学, 経済学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 自殺対策 / Poisson Regression / 幸福度 |
Research Abstract |
(1)市区町村レベルの自殺者データを用いた分析-内閣府が市区町村別データの公表を開始したため、これまでの都道府県レベルでは見ることができなかった市区町村レベルの特性と自殺の関係を分析した。自殺者数はもとより、人口構成や経済、財政、医療機関へのアクセス、地理特性等は同一県内であっても市区町村により大きく異なっている。特に、自殺の直前の段階である精神疾患はその発症の可能性がある段階で、居住地域の医療機関へアクセスしやすいかどうかが重要であり、また都道府県レベルではそのアクセスのよしあしを把握するには広域なため、市区町村レベルのデータでの分析が適している。手法としては、市区町村レベルの自殺者数は整数の少ない値をとるためPoisson RegressionおよびNegative Binominal Modelを用いた。結果、失業率や離婚率が高く、単身世帯が多く、65歳以上の人口が多い市区町村では自殺が統計的に有意に多かった。一方、出生率が高い地域や精神科・一般病院へのアクセスがよい市区町村ほど、自殺者数が統計的に有意に少なかった。これは現在、自殺対策のために精神科への通院を推奨する政府の政策を後押しするものとなった点で大きな貢献である。この結果は今年度6月に日本経済学会春季大会で発表した。その後、11月に国際学術雑誌Applied Economics Lettersに投稿し、2014年1月に採択が決定した。 (2)幸福度に関する研究- 自殺は、経済学的に言えば、効用がある閾値を下回ったときに行う行動である。そのため、効用を幸福度と言い換えることができるならば、幸福度の決定要因を探ることは自殺の原因を探ることと近いものである。自殺に関しては個票データが入手不可能だが、幸福度に関しては各国でパネルデータが整備されているため、それらのデータを用いた研究を今年度後半より開始した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記9の(1)市区町村レベルの自殺者データを用いた分析に関しては、日本経済学会での発表を終え、レフェリー付き国際学術雑誌に採択が決定したため、順調に進展したといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は引き続き、上記9(2)の幸福度に関する研究を推進していく。特に、我が国で最も自殺者の多い年齢層は60~69歳である。彼ら・彼女らの多くが健康問題を抱えていたとされている。そこで、中高齢者のパネルデータJSTAR (Japanese Study of Aging and Retirement)を利用し、(自殺の対極と考えられる)幸福度に関する研究を行う。データは取得済みで、研究は遂行可能である。また、日本のみならずアメリカ、ヨーロッパ、中国でもJSTARの姉妹版のデータがあり、それらも取得済みなため分析を発展させることができる。 研究結果は26年度中に国際学会で発表することを目指す。
|
Research Products
(2 results)