2012 Fiscal Year Annual Research Report
固液界面現象の解明に資する原子間力顕微鏡による液中ナノレベル電位分布計測法の開発
Project/Area Number |
12J10544
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小林 成貴 金沢大学, 電子情報学系, 特別研究員(PD)
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Keywords | 原子間力顕微鏡 / 液中電位計測 / 腐食 |
Research Abstract |
本研究では、最近開発した液中での局所電位分布を計測することができるオープンループ電位顕微鏡(OL-EPM)の性能向上のために、以下のことに取り組んだ。 1)空間分解能の改善:理論上、カンチレバーの共振周波数を高くすることで力検出感度が向上し、空間分解能が改善される。従来のものより1桁以上高い共振周波数をもつ小型カンチレバーを用いてCaCO_3表面の原子スケールでの3次元力分布計測を行ったところ、表面から離れた水和層まではっきりと可視化することに成功した。このことから、小型カンチレバーが空間分解能の改善に有効であることを実証できた。この結果は、液中FM-AFMのイメージングメカニズムの理解に関する海外の理論研究グループとの共同研究にも関係しており、IFの高い雑誌へ投稿する準備を進めている。 2)絶縁体基板上での電位計測:従来は導電性基板上での計測しかできなかったが、数μmの厚さしかない絶縁体基板とポテンショスタットを利用した電位の値の新規補正技術を利用することで、絶縁体基板上での電位計測の可能性を見出した。この方法が確立すれば、マイカに固定された生体分子などの電位計測が可能になると期待される。 3)産業分野への応用:ステンレスやCu微細配線は使用環境や製造過程において腐食することが知られている。OL-EPMを用いてそれらの液中電位分布計測を行い、腐食メカニズムとの関連性について評価した。その結果、腐食の起こりやすい箇所と電位分布に関連があることが分かった。また化粧品に使用される材料の物性評価にもOL-EPMを用い、予想されていた結果と近い結果が得られた。これらのことから、OL-EPMが様々な分野に応用できる可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度取り組んできた分解能向上や絶縁体状での計測といった課題に対しては、ある程度の見通しがついており、腐食などの応用研究も順調に進展しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
小型カンチレバーの高分解能液中電位計測や、絶縁体基板上での電位計測法の確立、OL-EPMの応用など今年度に取り組んできた課題を引き続き継続して取り組む。また、探針に自己組織化膜を施し、安定かつ再現性の高い電位計測を行うことが可能かどうかについて検討する。
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