2012 Fiscal Year Annual Research Report
児童の勤労概念に対する理解過程の検討-道徳授業に着目して-
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12J10589
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三輪 聡子 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 勤労観 / 道徳授業 / アナロジー / 初等教育 |
Research Abstract |
本研究の目的は,児童が勤労観の理解をいかに道徳授業の中で行っているのかを検討し,その理解をいかに支援することができるのかについて明らかにすることである。本年度は第一に,小学校6年生の道徳授業で,児童の勤労観の理解をアナロジー推論によって促すことができる可能性を示した。アナロジー推論を促す教示の差異による影響を準実験で検討した結果,構造的類似性に基づいたアナロジー例を提示することによって,物語文から勤労に関する考えを深く解釈する児童が多く見られた。また,話し合い場面の観察データから,外化された構造的アナロジーを媒介として児童が他者と協働的に解釈を行っていたことが示された。第二に,小学3年生から6年生の児童309名を対象に,働くことに対する意識の学年差を質問紙によって明らかにした。その結果,「働くことをどのような活動として意識しているのか(Ex自己実現的活動,社会貢献的活動,忍耐的活動)」と「自分が将来働くことをどのように意識しているのか」のモデルにおける学年差には,一貫した傾向としての変容は見られないことが示された。しかしその一方で,高学年では働くことに対する意識が不安感に繋がる傾向にあり他学年とは異なる様相が見られた。特に働くことに対する意識が分化していた6年生では望ましい勤労観の理解やその多様性の認め合いを促す必要があるだろう。第三に,物語文を用いた6年生の道徳授業での教師の役割を観察データから検討した。その結果,教師は登場人物と児童が共有する要素を対応づけて提示し,類似性を基に児童を登場人物と結びつけたり,離すことによって理解の支援を行っていた。以上から,児童の持つ勤労観,道徳授業での理解過程とアナロジー推論を利用した促進方法,類似性を用いた教師の支援方法の3点を明らかにし,従来検討されて来なかった道徳授業における児童の勤労観形成に対して示唆を得ることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、第一に、児童の持つ勤労観について明らかにし,学会発表を行うことができた。また,道徳授業内での勤労観理解の促しを論文として発表することができた。分析が終了している研究に関しても審査を受け,現在修正をして投稿に向けた準備を進めている。第二に,25年度に向けて小学校3年生から6年生を対象に課題プリントを実施しており,勤労観理解の促しに対して更なる知見を得られると考えられる。以上から,おおむね順調に進展していると評価を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は,質問紙を実施し子どもの持つ勤労観に焦点を当てて検討を行い,教師と児童の道徳授業内での発話分析から教師の役割について示唆を得た。今後は道徳授業内での児童(小学校6年生)の勤労観理解とアナロジー推論による促進方法をさらに検討していくために、教師と児童の発話を中心に観察を行う。しかし「勤労」を扱った道徳授業のみを観察対象とすることはその学級を理解する上で不十分であると考えられるため,「勤労」を扱った道徳授業のみならず継続的に同一の学級での道徳授業を観察し,道徳授業そのものの枠組みの中での価値観の理解と生成を検討していく。また,観察データに加えて課題に対する児童のパフォーマンス(プリント記述や質問紙等)内容やその変化も分析対象として含めていく。
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Research Products
(2 results)