2012 Fiscal Year Annual Research Report
前近代ペルシア語文化圏における世界認識:世界史書文献の研究
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12J10596
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
大塚 修 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 世界史書 / 地理書 / 歴史叙述研究 / 写本研究 / ハムド・アッラー・ムスタウフィー / ペルシア語文化圏 / イルハーン朝 / ジャラーイル朝 |
Research Abstract |
研究計画に従い、研究成果の公表と史資料の収集を進めた。 1.研究成果の公表。国際学会で報告者のこれまでの研究成果を口頭発表した。2012年12月7日、ナポリで開催された「写本とテクスト」という国際会議において、「ハムド・アッラー・ムスタウフィーの系図:いかに普遍史を数葉の紙に描くのか」と題する報告を行い、報告者が発見した新出史料とその史料的価値を紹介した。また、世界史書の中でも研究代表者が特に力を入れて研究しているハムド・アッラー・ムスタウフィー著『選史』に関する写本研究の成果を、「『選史』続編の研究:新出史料『ジャラーイル朝史(選史続編)』を中心に」『アジア・アフリカ言語文化研究』85号、2013年という形で出版した。 2.史資料収集。アラビア語、ペルシア語、トルコ語で書かれた世界史書・地理書文献の写本・石版本調査を、10都市19図書館で行った:(1)2012年9月18日~10月10日:オーストリア国立図書館、イラン学研究所、バイエルン州立図書館、ベルリン州立図書館、スレイマニエ図書館、(2)2012年12月4日~12月28日:ナポリ国立図書館、テヘラン大学、イラン国立図書館、議会図書館、マレク図書館、マルアシー図書館、イスラーム宝物センター、ゴルパーエガーニー図書館、レザー廟付属図書館、マシュハド大学、(3)2013年3月5日~3月16日:ビールーニー東洋学研究所、ウズベキスタン国立大学、(4)2013年3月21日~3月22日:京都大学、京都外国語大学。その他、パリの国立図書館から本研究に必要なペルシア語写本のマイクロフィルム3点を購入した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
写本調査を当初の予定よりも多い10都市19図書館で行い、未刊行の世界史書文献を収集できた。また、2度の国際会議での報告に加え、研究代表者が特に注目している世界史書文献『選史』の写本研究には大きな進展が見られ、史料論文を刊行できたことは評価できる。しかし、2012年度の写本調査で収集した文献の中にはまだ分析が終わっていないものもあり、2013年度は『選史』以外の文献の研究を進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に収集した文献の読解・分析を進め、その成果を学会報告、論文の刊行という形で公表する。世界史書文献の調査も引き続き行う予定である(今年度はイギリス、イランを予定)。 研究計画の変更。史資料収集の成果の一環として、1340年にハムド・アッラー・ムスタウフィーが著した博物誌『心魂の歓喜』の校訂・翻訳を始めた。『心魂の歓喜』は前近代ペルシア語文化圏で好評を博し、当時の世界認識・地理認識の形成に重要な役割を果たした作品であるにもかかわらず、作品の後半部分しか出版されておらず、未だにその全容は明らかにされていない。前半部分を分析するために、昨年度の史資料収集では、二つの古写本(1449年書写のパリ写本、148011年書写のイスタンプル写本)と1894年にボンベイで出版された石版本の複写を購入した。 これらに依拠し、順次校訂と日本語訳の作成を進めているところである。
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Research Products
(2 results)