2012 Fiscal Year Annual Research Report
ポリイン-ヨウ素錯体の振動分光による無極性溶媒中の三ヨウ化物構造の同定
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12J10606
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
和田 資子 近畿大学, 総合理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ポリイン / ヨウ素 / 分子錯体 / 光誘起反応 / 赤外分光 |
Research Abstract |
ポリインとヨウ素から成る新しい分子錯体についてその幾何構造を解明し、無極性溶媒中においてヨウ素が三ヨウ化物構造をとることの可能性を実験的に明らかにすることを目的として研究を行った。具体的には、ポリイン-ヨウ素錯体の実験に先立ち、研究の律速となっていたポリイン分子の分離・精製効率を向上させた。新規に購入した高速液体クロマトグラフィー対応の分取用ポンプと既存の分析用システムを組み合わせポリイン分子の大量分取に特化したシステムを構築した。これにより、ポリイン類を含む混合溶液からサイズ毎にポリイン分子を分離する効率が4倍に向上し、ポリイン-ヨウ素錯体を用いる実験を定常的に繰り返し行うことが可能になった。ポリイン-ヨウ素錯体の分子構造を解明するうえで錯体生成の制御方法を確立することが重要である。そこで、ポリイン-ヨウ素錯体の生成機構を明らかにするための速度論的実験を実施した。その結果、ポリイン-ヨウ素錯体の生成がヨウ素分子の1光子吸収によって誘起されることが明らかとなった。さらに、錯体生成に用いるポリインおよびヨウ素溶液の濃度が10^<-6>mol/L程度の希薄な条件では錯体生成以外に活性ヨウ素分子によるポリイン分子の分解反応が起こることを明らかにした。このことから、ヨウ素分子が光励起される以前にポリインと複数のヨウ素分子がゆるく結合した集合体を生成することが錯体形成の進行に必須の条件であり、より高濃度の実験が望ましいことを定量的に明らかにした。以上、ポリイン分子の分離効率の向上および錯体生成機構の解明はポリイン-ヨウ素錯体の分子構造を解明するための基盤技術として価値の高い研究であり、分光研究のみならず反応開発や材料研究にも応用可能な機能的側面をもつ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ポリインC_<2n>H_2(n=5-7)の赤外吸収スペクトルとポリイン-ヨウ素錯体C_<2n>H_2I_6(n=5-7)の吸収スペクトルを比較・考察することにより、錯体中におけるポリインとヨウ素の位置関係について新たな知見が得られたため。さらに、ポリイン-ヨウ素錯体の生成機構について、ヨウ素分子の1光子吸収によって誘起されることが実験的に明らかとなり、錯体の分子構造の解明に必要な錯体生成反応の制御が可能になったため。
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Strategy for Future Research Activity |
ポリイン-ヨウ素錯体の分子構造を明らかにする手段の一つとして実験研究と並行して量子化学計算を用いた研究に着手している。実験で得られた赤外吸収スペクトルを、量子化学計算によって得られるいくつかの最適化構造について予想される赤外吸収スペクトルと比較することにより、錯体構造の要点を明らかにできると考えている。さらには、共鳴ラマン分光によってポリイン-ヨウ素錯体中のヨウ素を含む結合に関する振動モードを直接明らかにすることを目指す。
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Research Products
(9 results)