2012 Fiscal Year Annual Research Report
第一原理計算に基づく二酸化チタン高圧相固溶体の合成と常圧安定化
Project/Area Number |
12J10639
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
村田 秀信 独立行政法人物質・材料研究機構, 先端材料プロセスユニット, 特別研究員(PD)
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Keywords | 二酸化チタン / 高圧合成 / 第一原理計算 / 格子振動 / 状態図 |
Research Abstract |
高圧を利用する研究は地球科学的見地と共に、材料研究の立場からもその重要性は注目されている。しかし、高圧下で安定な構造が常圧下に取り出せるとは限らず、利用できないことが多い。そのため、高圧相の凍結方法を見出すことができれば、材料設計の選択肢が著しく広がる。本研究では、固溶体形成による高圧相安定化という手法の開発を目指し、その実証およびメカニズムの解明を目的とする。 本年度は二酸化チタンを対象として、高圧相の安定領域に関する固溶体形成の効果を調べた。具体的には、二酸化チタンと二酸化スズから成る擬二元系に関して、圧力・温度・化学組成を変数として高圧からの回収実験を行った。また、第一原理計算により二酸化チタンの温度・圧力相図を計算し、相転移のメカニズムについて考察を行った。 純粋な二酸化チタンでは、7.7GPaにおいて1300℃以下では高圧相のTiO_2-II相が、1300℃以上では常圧相のrutile相が安定であるが、二酸化スズを1at%添加した二酸化チタンにおいては1350℃においてもTiO_2-II相が残存しており、二酸化スズ添加が高圧相安定化を起こすことが確認された。 一方、第一原理計算においては、+U法を用いて計算を行った。通常の局所密度近似(LDA)の場合と比べて、格子定数の増大、格子振動の振動数の増大、相転移圧力を高圧側にシフトさせるなどの傾向がみられた。LDA+Uにおいて、UE=3.0eVにおいて、実験で報告されている相境界を良く再現した。rutile相とTiO_2-II相では結晶構造にTiO_6八面体を持つという共通点があるが、TiO_2-II相の方が高密度であり、圧力下において電子系のエンタルピーが低くなる。一方、格子振動の音響モードにおいてrutile相の方が低い振動数を示しており、このことが高温下においてrutile相を安定化する要因だと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目的である、二酸化チタン-二酸化スズ固溶体形成による高圧相の安定化効果の実証が、高圧からの回収実験により確認することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究においてα-PbO_2型構造を持つTiO2-II相が常圧下に回収可能であることを確認したため、TiO_2-II相に関して光触媒活性の測定などの様々な応用について検討を行う。 並行して、より高圧相であるbaddeleyite相の常圧安定化の可能性に関して、試料回収実験および第一原理計算により、実験と理論の両面から検討を行う。
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Research Products
(3 results)