2012 Fiscal Year Annual Research Report
項目反応間の局所依存度が項目およびテストの諸特性の推定に与える影響
Project/Area Number |
12J10650
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
登藤 直弥 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 局所独立性 / 局所依存性 / 項目反応理論 / 特性値 / 項目母数 / 項目母数の比較可能性 / 古典的テスト理論 |
Research Abstract |
大問形式の問題においては,同じ特性値(学力等)を有する受験者であっても,出題された問題文や図表を正確に読み取れた受験者は関連する項目群全てに正答する確率が高くなる等と考えられるため,特性値で条件付けた場合に項目への回答間が独立ではなくなると考えられる.本年度一つ目の研究では,このような局所依存性を考慮する複数のモデルと考慮しない(局所独立性を仮定する)モデルを局所依存性が生じている回答データに当てはめて,モデル間で特性値の推定精度の比較を行った. その結果,モデル間で特性値の推定精度にほとんど差は見られなかった. 先行研究においては,局所依存性が項目の難しさ等の項目特性(項目母数)の推定に及ぼす影響についても検討が加えられているのだが,先行研究においては,互いに意味するところが異なる項目母数が直接比較されており,それらを比較して得られた先行研究の結果には,局所依存性以外の要因も反映されているのではないかと考えられた.そこで,本年度二つ目の研究では,項目母数を直接比較可能な形にした上で,局所依存性が項目母数の推定にどのような影響を及ぼすのか検討した. その結果,局所依存性が生じているデータに対し局所独立性を仮定して項目母数の推定を行うと推定精度が低下すること,先行研究の知見の少なくとも一部は歪められていること等が示唆された. また,本年度三つ目の研究では,局所依存性が実際にテストを作成する際に頻繁に用いられる通過率等の古典的な項目統計量,α係数等の古典的なテスト統計量にどのような影響を及ぼすのか検討した. その結果,局所独立性を仮定し古典的な統計量を算出するとその値にバイアスが生じることがある等のことが示唆された.これらの研究により,平成24年度には,大問形式の問題を含むテストの分析,作成に資する知見を得ることができたと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的は,項目反応間の局所依存性がテストの諸特性に対しどのような影響を与えるのか、詳細な検討を行っていくこと,であるが,現在までに,局所依存性が特性値の推定,項目母数の推定,古典的な項目,テスト統計量の算出に対してどのような影響を与えるのかについて,研究代表者により検討が加えられている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題を推進するため,今後の研究では,まず,局所依存性を検出,推定するための様々な指標をその方法論的特性に基づいて分類し,各タイプの指標が最も精度良く局所依存性を検出,推定できるのはどのような状況下であるのか,シミュレーション実験を通して探索的に検討する.次に,大問形式の問題において生じ得る局所依存性がテスト情報量の推定にどのような影響を及ぼすのか,シミュレーション実験を通して検討し,この検討結果も踏まえながら,大問形式の問題を含む適応型テストの適切な作成,運用方法について,項目プールの作成方法,あるいは,項目プールからの項目や大問形式の問題の選択方法といった観点から検討を加える.
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Research Products
(5 results)