2012 Fiscal Year Annual Research Report
癌抑制マイクロRNA調節因子による癌化メカニズムの解明
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12J10660
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
樋口 琢磨 高知大学, 総合人間自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | NF90 / NF45 / RNA結合蛋白質 / miRNA / miR-7 / 肝細胞癌 / ミトコンドリア変性 |
Research Abstract |
我々はmicroRNA(miRNA)の産生を制御する二本鎖RNA結合蛋白質Nuclear Factor 90(NF90)とその結合パートナーであるNF45の複合体(NF90-NF45)による腫瘍化制御機構の解明を目的とし、研究を進めている。本年度は肝細胞癌におけるNF90の発現増加機構の解明、NF90・NF45による癌抑制miRNAの産生制御機構の解明及び個体レベルの解析に用いるNF90-NF45過剰発現マウス(NF90-NF45Tgマウス)の作出を試みた。 NF90の発現増加機構の解析では、本遺伝子の転写活性化に細胞周期調節因子E2F-1、-2が重要であることを明らかにした。、 NF90-NF45による癌抑制miRNAの産生制御機構の解析では、肝癌細胞株においてNF90-NF45が癌抑制miRNAの一つであるmiR-7の産生を抑制することを見出した。 一方、個体レベルの解析に用いるNF90-NF45Tgマウスの作出にも成功した。現在、NF90-NF45による各臓器での腫瘍形成への影響を検討している。加えて、このマウスを作り出す過程で作出したNF90Tgマウスが顕著な表現型を示すことも明らかにした。NF90Tgマウスでは野生型マウスと比較し筋量、筋力、心機能の低下が認められる。またこれらの機能異常の発症は、NF90が核内ミトコンドリア関連遺伝子のマスター制御因子の翻訳を抑止することで生じるミトコンドリアの変性に起因することを見出した。(Higuchi et a1, PhoS One, 2013)。 本年度の研究から、細胞周期制御因子E2F-1、-2により発現増加したNF90がNF45と複合体を形成し、そのNF90-NF45が癌抑制miRNAの産生抑制を介した細胞腫瘍化に関与すること及びNF90が個体のミトコンドリア産生制御に関与することを示す非常に重要な成果を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画に記載したNF90の発現調節機構の解明及びNF90-NF45による癌抑制miRNAの産生制御機構の解明を目指した解析は計画通り進行している。個体レベルの解析に用いるNF90-NF45 db Tgマウスの作出も計画通り完了している。これに加えて、その過程で作出したNF90Tgマウスの表現型解析を行った。その結果、NF90単体での新たな機能を明らかにし、この研究成果は学術雑誌に掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究成果より、肝細胞癌においてNF90-NF45が癌抑制miRNAであるmiR-7の産生を阻害することが分かった。また我々の以前の解析結果より、NF90が細胞増殖に促進的に機能することが明らかになっている。 これまでの報告からmiR-7は上皮成長因子受容体(EGFR)やインスリン様成長因子受容体(IGF-1R)を直接の標的として、細胞増殖シグナルを抑制することが示されている。そこで、NF90-NF45がmiR-7の産生制御を介してこれらの因子の発現及びその下流シグナルに影響を及ぼすかを解析していく予定である。また個体レベルの解析においては、作出したNF90-NF45 db Tgマウスを用いて各臓器における腫瘍形成への影響を検討中である。
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Research Products
(8 results)