2012 Fiscal Year Annual Research Report
M.ポランニーの「学問の自由」に関する思想史的研究-バナール
Project/Area Number |
12J10694
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮地 和樹 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | マイケル・ポランニー / 高等教育 / 大学論 / アカデミック・フリーダム / モード論 / ジョン・デスモンド・バナール |
Research Abstract |
本研究の目的は、M.ポランニーの「学問の自由」を明らかにすることである。その際、思想史的な方法論を用いてアプローチすることであった。本年度の研究の成果は以下の通りである。 第一に、1930年代後半まで科学者であったポランニーが、哲学者へと転向した原因を論的であったJ.D.バナールとの論争であるということを明らかにした。この点は、先行研究でも言及されることはあるものの、その経緯、論点などを両者の文献を比較検討しながら明らかにした点に本研究の意義がある。とりわけ、その経緯をシカゴ大学に所蔵されている未公刊の書簡や、彼がバナールに対抗して活動した「科学の自由のための協会」の会議のパンフレットなどから明らかにした点は、資料的価値も含め本研究の独創的な点である。その成果は、日本教育学会第71回大会(於名古屋大学、8月26日)にて「ポランニー=バナール論争再考-科学と社会の関係性を論点として-」と題して発表済みである。第二に、ポランニーの「学問の自由」を理論的に明らかにした。この点は、第一の思想史的な背景を基礎に置きながらも、現代の知識生産機関ないしは学術研究機関としての大学の機能の変容を問題点として、研究を進めた。その際に、現代の知識生産様式の変容のモデルとして、マイケル・ギボンズらが提唱する「モード1」と「モード2」の二つがその理念型として挙げられることを前提にした。そして、ポランニーの主張が「モード1」の知識生産様式と合致すること、またその学問の秩序の形態を綿密に描き出していることを明らかにした。本研究の成果は、日本教育哲学会第55回大会(於早稲田大学、9月17日)にて「中間集団としての「科学者の共和国」についての考察-M.ポランニーの自由論と秩序論を中心に-」と題して発表済みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究内容としては、研究計画の目的以上の内容まで踏み込めている。ただし、研究計画の予定であった雑誌への投稿が遅れているので、今後はその成果の投稿を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の計画は、第一に現在までに達成された二つの研究成果の雑誌への投稿である。この点に関しては、現在『教育哲学研究』および『教育学研究』に投稿予定であり、執筆が勧められている。第二に、シカゴ大学ジョセブ・レゲンスタイン図書館でのマイケル・ポランニーの未公刊の論文・書簡などの史料調査を行うことである。この点に関しては、今年度の7月から調査開始を予定している。
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Research Products
(3 results)