2012 Fiscal Year Annual Research Report
X線・可視光で探る活動銀河核電離領域ガスの化学組成の研究
Project/Area Number |
12J10755
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
鮫島 寛明 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 活動銀河核 / 超巨大ブラックホール / 化学進化 / 第一世代星 |
Research Abstract |
本年度はAGNのX線スペクトル変動を説明するとして提唱されている「部分吸収モデル」の検証を行った。まず部分吸収モデルで最も重要である電離吸収体による光の吸収について、輻射輸送コードXSTARを用いてシミュレーションを行った。過去の研究に対し、赤方偏移を考慮した点、電離度の低いガスも考慮した点、エネルギー分解能を大きな高分散スペクトルを計算した点が新たな点である。このシミュレーション結果とX線天文衛星「すざく」で取得されたセイファート銀河MCG-6-30-15のスペクトルとの比較から、電離吸収体の電離度が、可視光観測から示唆される広輝線領域ガスの電離度と矛盾しないことが明らかとなった。これは従来紫外・可視光スペクトルで研究が行われていた広輝線領域ガスの性質を、X線スペクトルからも調べることができる可能性を示唆しており、本研究の大きな目標である化学組成の測定に向けた大きな前進と言える。 さらに「部分吸収モデル」の普遍性について検証を行うべく、「すざく」で観測されたAGNの解析を行った。サンプルとして本研究代表者が中心となって観測した2天体に加え、「すざく」アーカイブデータから時間変動が大きいセイファート銀河27天体についてスペクトルを調べた。その結果、スペクトルの形状はすべての天体で部分吸収モデルで説明が可能であること、また22天体については時間変動をガスのカバリングファクターという一つのパラメータを変化させることで説明できることを確認した。さらにスペクトルの形状に関して、従来の「部分吸収モデル」では2keV以下の低エネルギー領域が観測とずれていたのに対し、新たに二重の部分吸収を想定して観測スペクトルのフィッティングを行った結果、低エネルギー領域も含めた広いエネルギー範囲で、観測スペクトルを再現できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は「部分吸収モデル」の詳細および普遍性に関する検証を目標に研究を進めた。前者は輻射輸送コードを用いたスペクトルシミュレーションと観測との比較から、後者は実際に観測した天体とアーカイブデータを組み合わせ、「部分吸収モデル」でフィッティングを行うサンプルを増やしたことにより、それぞれ一定の進展を達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
電離吸収体の性質に関する研究として、本年度検討した電離度と並んで重要なパラメータである組成に重点を置いて輻射輸送のシミュレーションを行う。また次世代X線天文衛星で達成されると期待される高エネルギー分解能を考慮し、これまでの装置では分解できなかった細い輝線・吸収線から、組成をはじめとする電離吸収体のパラメータについてどのような情報が得られるかの検討を行う。 また「チャンドラ」、「XMM-Newton」などのX線アーカイブデータ、「SDSS」、「HST」などの紫外・可視光アーカイブデータを組み合わせ、組成に対するAGN環境の効果などを検討する。
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Research Products
(5 results)