2013 Fiscal Year Annual Research Report
X線・可視光で探る活動銀河核電離領域ガスの化学組成の研究
Project/Area Number |
12J10755
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
鮫島 寛明 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 活動銀河核 / 超巨大ブラックホール / 光電離ガス / 化学組成 |
Research Abstract |
本年度は、可視光データとX線データを組み合わせることで、化学組成以外に観測される輝線強度に寄与するガスのパラメータについて調査を行った。具体的には可視光スペクトルの最大のデータベースであるスローン・デジタル・スカイサーベイ(SDSS)からクェーサー約17,000天体分のスペクトルを解析し、輝線強度のパラメータ依存性を調べた。その結果、輝線強度はエディントン比と呼ばれる量に強く依存していることが分かった。しかしその依存性は単純なクェーサー進化モデルから予想される組成比依存性とは逆の傾向を示しており、組成比以外が原因であることを示唆される。これはすなわち、輝線強度から組成比を調べる際には、この効果を補正する必要があることになる。この効果の原因を調べるために、輻射輸送コード Cloudy を用いて数値シミュレーションを行った。計算で密度、電離度、内部速度場などのガスパラメータを動かしてみたが、いずれも観測を再現できず、結局シミュレーションからは原因が分からなかった。 次に波長の異なるX線の方からガスのどのパラメータがエディントン比と関連しているかについて調べることにした。X線天文衛星「すざく」のデータアーカイブを調べたところ、典型的なクェーサーとされるPGクェーサーを12天体観測していることが分かった。これらについてX線スペクトルの基本的な観測パラメータ(光度、べき乗連続光成分のべき指数、時間変動、吸収量など)を求め、パラメータ間の関係を主成分分析の手法で調べた。その結果、ガスの吸収量や反射の強度といった天体を見込む角度に関連すると考えられるパラメータとエディントン比が相関していることが明らかになった。このようにX線観測と組み合わせることで、輝線強度に影響しているエディントン比の物理的背景は天体を見込む角度である可能性が強いことを初めて明らかにした。これは輝線強度から化学組成を推定する上で重要な発見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
クェーサーの輝線強度比から組成比を推定するにあたって最大の障壁と考えられるエディントン比依存性を発見し、さらにX線スペクトルを調べることでその物理背景が天体を見込む角度である可能性が高いことを明らかにした。これは、正確な化学組成測定という本研究の最大目標に向けた大きな前進である。
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Strategy for Future Research Activity |
一つは近傍クェーサー(あるいはセイファート銀河)のX線スペクトルから吸収体の化学組成を求めることである。特に2015年打ち上げ予定の次世代X線天文衛星Astro-Hではこれまでよりエネルギー分解能が桁で向上した高分解スペクトルが得られるため、様々な細い輝線・吸収線が多く見られることになる。これら新しい輝線・吸収線から化学組成の情報を引き出せるか検討する。 二つ目はクェーサーでの化学組成進化を追うことである。特に近年は宇宙年齢が8億年未満の宇宙初期のスペクトルが得られており、これから得られる化学組成の情報から宇宙初期の星形成について制限を加えられるか検討する。
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Research Products
(3 results)