2012 Fiscal Year Annual Research Report
触媒的脱芳香族化反応による複雑構造有機分子の効率的合成
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12J10778
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三ツ沼 治信 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 脱芳香族化 / 遷移金属錯体 / π-アレーン錯体 / イリジウム |
Research Abstract |
研究の初期検討として、双性イオン中間体を経たベンゼン環の脱芳香族化反応を試みた。しかしながら、脱芳香族したアニオン性種と金属の配位が予想以上に強固であり、その解離には過酷な条件が必須であることが明らかとなった。また、錯体によっては芳香環と求核部官能基の金属への配位が競合し、反応の進行を妨げることが分かった。 そこで上記結果を踏まえ、私は酸化的条件下で脱芳香族化したアニオン性配位子を解離させる代替案を立案した。中心金属としては酸化条件に耐え、π親和性が非常に高い三価のイリジウムを選択することとした。検討の結果、[Cp*Ir(arene)]2PF6錯体を用いた際、種々の求核剤が芳香環に付加することを見出した。予想した通り、イリジウムの高いπ親和性ゆえ、他の官能基の金属中心への配位は一切観測されなかった。また、高原子価のイリジウムを用いることで芳香環の求電子性を著しく上昇させることができ、非常に温和な条件にて脱芳香族化反応が進行した。 今後の展開としては、1.脱芳香族化したアニオン性種を酸化条件にてジエン種へと変換すること、2.この種と芳香環の配位子交換の確認を行い、触媒反応に応用していく予定である。ここでは高原子価のイリジウムの配位子への逆供与の弱さゆえ、配位子交換が容易であると予想している。 また今年度はアメリカ合衆国・カリフォルニア大学バークレー校Hartwig研究室に四ヶ月海外短期渡航として在籍した。Hartwig教授は遷移金属錯体を扱った触媒反応の世界的第一人者であり、四ヵ月間の滞在を経て遷移金属錯体の扱い方や広範な知見を得ることができたと確信している。今後はこの経験を糧に本研究遂行に生かしていきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高い官能基許容性を示し、脱芳香族化を非常に温和な条件で進行させるイリジウムアレーン錯体が目的反応に適していることを見出した。触媒化の実現に向けた第一歩として満足のいく発見だと認識している。また、四ヶ月の短期海外渡航を通じ(Hartwig研究室、カリフォルニアバークレー校)、本研究遂行に必ずや役立つであろう、遷移金属錯体の扱い方や知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の展開としては、[Cp^*Ir(arene)]2PF6錯体を用い、1.脱芳香族化したアニオン性種を酸化条件にてジエン種へと変換すること、2.この種と芳香環の配位子交換の確認を行い、触媒反応に応用していく予定である。ここでは高原子価のイリジウムの配位子への逆供与の弱さゆえ、配位子交換が容易であると予想している。
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