2013 Fiscal Year Annual Research Report
触媒的脱芳香族化反応による複雑構造有機分子の効率的合成
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12J10778
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三ツ沼 治信 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 1,3ポリオール / アルドール反応 / 触媒的不斉 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の計画にあったアレーン錯体を用いた脱芳香族化反応は種々の検討から極めて困難であると判断し、他の手法により複雑構造分子の合成に取り組むこととした。 1,3ポリオール骨格は多くの複雑構造生物活性分子や医薬品に普遍的な重要骨格であるにも拘らず、現在その立体選択的な合成にはアルデヒドに対し、エステルやアミド誘導体を付加させるといった複数の酸化還元段階の調製を必要とするプロセスが主流となっている。この観点からアルデヒド同士を立体選択的に付加させることができれば最も理想的な1,3ポリオール合成が可能になる。 私は当研究室で開発されたイリジウム錯体と一価銅/不斉配位子の組み合わせにてホウ素アルデヒドエノラートによる異種アルデヒド間触媒的不斉交差アルドール反応を用い、連続的反応に適用していくこととした。本年度は二連続付加、三連続付加を目標にして、複雑構造分子の効率的な合成を目指した。 種々の反応条件の検討の結果、ダブル付加までは問題なく進行するものの、以降の付加はほとんど観測されないことが分かった。そこで反応系をNMRにて追跡したところ、二連続付加後生成物は環化体で存在しており反応点であるアルデヒド部位が露出していないことが明らかとなった。私はこの副反応である環化においてホウ素の空配位場が重要な役割を果たしていると考え、ルイス塩基の添加を検討することとした。検討の結果、ルイス塩基としてトリエチルアミンを添加したところ所望の三連続付加体を高収率にて得ることができた。また反応機構解析の結果、トリエチルアミンの添加により副反応である環化が抑制されていることが示唆された。さらにルイス塩基としてジアミンであるTMBDAを添加することで前例の無い四連続付加体を得ることにも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
複雑構造分子の効率的合成を目標に掲げ1,3ポリオールの合成研究に取り組んできたが私は以下の二点により当初の期待以上に進展していると考えている。一点目として世界初のアルデヒドエノラートの触媒的不斉三連続付加を達成した点である。既存系では二連続付加以降の環化反応が極めて深刻な副反応であるがルイス塩基を添加するという概念を適用することで根本的にこの問題点を解決しうる方法論を提示することができたと考えている。二点目に本概念の適用により世界初のアルデヒドエノラートの触媒的不斉四連続付加を達成した点である。これはラセミ反応においても前例が無く、ポリオール類の迅速な供給に大きく貢献する知見であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
以下二点を今後の推進方策として提案する。まず一点目に本反応系の基質一般性の拡充を行うことである。求電子剤アルデヒドとして芳香族アルデヒドを始め、種々の官能基を有する基質においても反応が適用できるかを確かめる。二点目に触媒的不斉四連続付加反応の収率向上である。これに関してはジアミンの構造を変換したものを検討することに加え、二座ルイス塩基としてジアミン以外のフォスフィンオキシドやスルフォキシドなどを導入し本反応に適用する。
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