2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J10830
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
蔡 煕鏡 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ニヴフ語 / サハリン方言 / 記述文法 |
Research Abstract |
本研究の目的は、第一にニヴフ語の文法の全体像を正確に、かつ十分に記述することである。第二の目的は、他言語との対照や類型論的な研究に役立つことである。 今までのニヴフ語に関する先行研究を見ると、その多くがアムール方言を対象としており、サハリン方言を網羅的に扱っている研究は管見の限り見当たらない。こうした実情から、平成25年度には昨年度に引き続き、サハリン島において現地調査を行った。 平成25年度には、主にニヴフ語における名詞化や使役構文、複数標識について研究を行った。特に名詞化に関しては、節の名詞化(clausal nominalization)に焦点を当てて、その名詞化節の形態・統語的な特徴を明らかにすることを試みた。この研究の成果は他言語の研究者たちとともにワークショップの形で、日本言語学会で発表する予定である(採択が決まっている)。ワークショップの形で発表することで、他言語との違いが浮き彫りになることを期待している。 使役構文に関しては、複文における使役の作用域に注目して研究を行った。また、地理的に近いツングース諸語や日本語、朝鮮語、モンゴル語との対照も試みた。この研究は、本研究員が所属している大学の研究紀要に投稿する予定である。複数標示に関する研究の成果は『北方人文研究』第7号に発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は、平成25年度に2回の現地調査を予定していたが、インフォーマントの健康悪化のため、夏休みに予定していた調査を計画通りに実施することができなかった。ただし、その代わりに網走の北方民族博物館所蔵の南サハリン方言に関するいわゆる服部文庫の資料を収集することができたのは、今後の研究において役に立つと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
ニヴフ語の研究には、現地調査が必要不可欠である。さらに、ニヴフの人々の生活や文化をより深く理解するためには、長期間に渡って彼らと生活を共にすることも必要であると考えている。しかしながら、今まで長期の現地調査を行うことができず、夏と冬の休み期間を利用した短期の調査を主に行ってきた。本研究員は、今現在サハリン州立博物館の関係者や現地のほかの協力者と交渉を行っており、今年度の7月に約3か月の長期の調査を行う予定である。
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Research Products
(2 results)