2012 Fiscal Year Annual Research Report
「国際比較から捉える日本の規制改革と規制システム」
Project/Area Number |
12J10859
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
深谷 健 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 規制政治 / カルテル / プリンシパル=エージェント / 規制緩和 / 選挙制度改革 |
Research Abstract |
日本の規制緩和を政治学的かつ国際比較の視点から相対化して分析するという課題に照らし、平成24年度は、以下の研究を遂行した。第1に、年度後半より米国イェール大学での在外研究を遂行し、政治学のリサーチデザインに従い日本の規制緩和を分析するフレームを構築した。ここでは、まず、プリンシパル=エージェント理論に依拠して日本の産業・政治・官僚の関係を分析するフレームを設定した。その上で、具体的に、航空、石油、電気通信産業といった、かねてよりカルテルが存在したと考えられる産業を対象として、規制緩和期における各々の変化を分析した。その結果、1990年代半ば以降の市場の動きを契機として、産業ごとにカルテルの持続と崩壊といった差異を確認するに至り、暫定的にもその知見を得た。 第2に、こうしたカルテル持続の多様性を前提として、規制政治の特徴を理解するに不可欠な視点を得た。すなわち、日本の規制政治の理解においては、代理人(官僚)に対する本人(政治家)の政治的選好を把握することが重要であり、この点で、1994年の選挙制度改革による小選挙区制の導入を契機に、幾つかの産業においては、この政治的選好が従来の生産者志向から消費者志向へと変化している可能性を認識するに至った。当該制度改革は現代日本政治を理解する上で不可欠となる変化であるだけに、この規制政治へのインパクトを可視化することが課題となる。本年度は、医薬品産業を素材としてその検討を開始したが、具体的成果を得るには至らず、次年度に持ち越された課題となる。第3に、当該研究へ適用可能な政治学方法論の理解と習得に力を注いだ。特に数理・計量分析(主に因果的推論)を用いた研究論文を猟歩することで、現代の米国政治学の先端的方法論の理解に努めた。本研究にこれらを適用し頑健な実証分析を提示することが、あわせての課題となる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の段階で、国際比較のコンテクストを踏まえて、政治学的に日本の規制緩和を分析・解釈するフレームと実証分析の可能性を示すことができたため、概ね順調な進捗状況となっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、規制政治研究において重要となる政官関係の実証分析を本格的に遂行する必要がある。特に、選挙制度改革の前後での政治的選好の変化と規制政治の関係を実証的に分析するため、設定したモデルの修正、政治家の選好に関するデータ収集を行い、分析を深めることがその第一歩となる。その上で、国際比較のコンテクストの中で、日本の規制政治の持続と変容を特定することが課題となる。
|