2012 Fiscal Year Annual Research Report
ゼロ電荷供給層超伝導体への有機物侵入による超伝導臨界電流密度メカニズムの解明
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12J10927
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
青葉 知弥 長岡技術科学大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 銅酸化物超伝導体 / 高圧合成法 / ゼロ電荷供給層 |
Research Abstract |
本年度は、銅酸化物超伝導であるSr_2Ca_2Cu_3O_<8+δ>(0^<(sr)>2^<(ca)>23)相が、大気中に暴露することで派生相が形成されることに着目し、所望の分子の吸脱着が可能か検討した。まず、ゼロ電荷供給層を持つ類似物質でも同様の派生相が形成されることを確かめた。また、透過型電子顕微鏡を用い構造解析を行った結果、いずれの相も同様の構造変化を示したことから侵入物もまた類似構造を成していると考えられる。この結果から0223相で知られていた派生は、無限層に関係なくゼロ電荷供給層に由来する特性であることが示唆された。超伝導量子干渉計により超伝導転移温度の評価した結果、いずれの相も派生前後で変化せず、相変化によりキャリア密度の変化が生じていないことが示唆された。また、侵入した水分子が脱着可能性を検討するために、派生相を加熱処理を行ったところ、母相に戻ることはなく分解した。しかしながら、母相である(0^<(sr)>2^<(ca)>23)相を加熱したところ、今までに知られていた派生相とは異なる新規派生相を形成することを発見した。エネルギー分散型X線分光法により陽イオンの組成比はほとんど変化がなく、電子エネルギー損失分光法により炭素が結晶構造内に炭酸基を形成して存在していることが分かった。さらに、侵入した炭素の由来を調査するために、超高真空下で加熱を行った結果、大気圧で加熱した場合に比べ、反応速度が減少しており大気中に存在する二酸化炭素が原因であったことが示唆された。超伝導転移温度は、105Kから90Kに減少した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
銅酸化物超伝導であるSr_2Ca_2Cu_3O_<8+δ>(O^<(Sr)>2^<(Ca)>23)相が、大気中に暴露することで派生相が形成されることに着目し、所望の分子の吸脱着が可能か検討した。派生相を加熱処理を行ったところ、母相に戻ることはなく分解した。しかしながら、大気下の熱処理により今までに知られていた派生相とは異なる新規派生相を形成することを発見した。以上の結果は、当初の目的であるキャリア分布が臨界電流密度特性を決定する因子の一つであるか検証のための材料としてゼロ電荷供給層超伝導体が適用可能であることを示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
前年までに作製した派生相の正確な結晶構造を決定するために、電界放射型透過電子顕微鏡による観察ならびにX線回折装置によるリートベルト解析を行う。これらを行う際の問題点として、試料に含まれる不純物が挙げられる。 この対策として、試料の作製条件の最適化を行う。また、昨年度で得た知見を活かし、ゼロ電荷供給層超伝導体を前駆体とした新規派生相の形成を推進する。さらに、本研究の大目的であるキャリア分布の測定を進めていく予定である。
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Research Products
(3 results)