2013 Fiscal Year Annual Research Report
ゼロ電荷供給層超伝導体への有機物侵入による超伝導臨界電流密度メカニズムの解明
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12J10927
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
青葉 知弥 長岡技術科学大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 銅酸化物超伝導体 / 高圧合成法 / ゼロ電荷供給層 |
Research Abstract |
昨年度でに、ゼロ電荷供給層を持つ超伝導体が派生相を形成することを確かめ、その派生相は形成温度に依存して、別の形態をとることが示された。本年度は、昨年度に発見したSr_2Ca_2Cu_3O_<8+δ>(O^<(Sr)>223)相を母体とする炭素を含む新たな派生相を踏まえ、類似物質であるSr_2CaCu_2O_<6+δ>相とSr_2Ca_3Cu_4O_<10+δ>相に関しても同様な処理を行い、O^<(Sr)>223と類似の格子定数変化と炭酸基の形成が確認された。このことから、ゼロ電荷供給層超伝導体への炭酸基の侵入は、本物質系の特徴であるゼロ電荷供給層で起こる特異な現象であることが示唆された。また、ゼロ電荷供給層超伝導体の合成条件を最適化を試みた結果、形成されるゼロ電荷供給層超伝導体のCuO_2面の枚数は焼成温度と焼成時間の増大に伴い、単調に増大することが確認された。このことから、高圧下においても常圧下で報告されていたことと同様に、低次のCuO_2面を持つ物質にCaCuO_2層がインターカレーションすることで高次の物質が得られていることが示唆され、CuO2面が5枚以上の高次の相を得ることが出来た。また、合成条件を最適化することでO^<(Sr)>223相のマイスナー体積分率は20%から50%程度の値まで改善した。また、O^<(Sr)>223相とその派生相に対して超伝導量子干渉磁束計を用いて得た磁気ヒステリシスから粒内臨界電流密度ならびに不可逆磁場を見積もった。水素などの軽元素を結晶構造中に含有する思われる派生相において、母相よりも不可逆磁場の温度依存性が明らかに改善された。この結果は、O^<(Ba)>223相での報告と一致している。次年度では、こうした不可逆磁場特性が改善した理由について、軽元素で形成されている派生層部によりピン力が増大したためなのか、あるいは本研究で予想したキャリア分布というパラメータが有効に働いているのか検証する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
キャリア分布と臨界電流密度特性の関係について知ることが研究目的である。本年度の研究により磁気ヒステリシスから粒内臨界電流密度を見積もることができ、派生による臨界電流密度の向上が確認できた。また、キャリア分布を得るために必要な詳細な原子位置を決定するため、X線回折ならびに中性子回折の構造解析を行っている。以上の理由から、本研究はおおむね順調に進展していると云える。
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Strategy for Future Research Activity |
水素や酸素などの軽元素を含めた詳細な元素位置を特定するため、中性子回折を用いた結晶構造解析を遂行する。構造解析においては試料の純度が高いことが要求されるため、今年度に引き続き試料合成条件の最適化を進める。その後、得られた構造情報から計算したキャリア密度と、定量的収束電子回折を用いた回折強度を比較することで試料のキャリア分布を特定する予定である。以上の結果と、本年度に測定した臨界電流密度特性を比較することにより、臨界電流密度特性がキャリア分布に依存するか評価する。
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Research Products
(6 results)