2012 Fiscal Year Annual Research Report
電磁イオンサイクロトロン波動の非線形波動解析に基づくジオ・スペースプラズマ環境の研究
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12J10930
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
小路 真史 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 地球内部磁気圏 / プラズマ波動 / 波動粒子相互作用 / 大規模シミュレーション / EMICトリガード放射 / 高エネルギーイオン / 非線形波動 / プロトンオーロラ |
Research Abstract |
地球内部磁気圏の赤道域を再現したハイブリッドシミュレーションによって電磁イオンサイクロトロン(EMIC)トリガード放射の励起メカニズム、及びと高エネルギーイオンとの非線形波動粒子相互作用の解析を行った。ヘリウムのサイクロトロン周波数よりも低い周波数EMIC波は、プロトンバンドのEMIC波の比べて高いエネルギーのプロトンと共鳴することが可能である。これまでに観測では報告例が無いヘリウムバンドのEMICトリガード放射を再現し、磁気嵐時に現れるリングカレント中の高エネルギーイオンとの相互作用について解析を行った。ヘリウムバンドトリガード放射の再現に成功し、プロトンバンドトリガード放射と比べて、十数倍のエネルギーを持つプロトンのピッチ角を散乱することを示した。ピッチ角散乱された粒子の一部はロスコーンに落ち、地球の極域でプロトンオーロラを引き起こす。異なるエネルギー帯と相互作用するこれらのトリガード放射の存在により、様々な種類のプロトンオーロラの発生要因となっている可能性を示唆した。また、内部磁気圏において、磁気嵐時に強く生じるイオンの温度異方性によって自発的に発生するEMICトリガード放射を再現した。衛星観測や地上観測で見られる、トリガード放射の周波数上昇及び、間欠的な波形がシミュレーション空間中で再現できた。また、波動と相互作用している高エネルギープロトンの位相空間中において、電磁プロトンホールと呼ばれる粒子密度の偏りが現れており、波動の電場・磁場成分方向の共鳴電流を形成していることを示した。これらの電流は波動の成長・周波数の上昇をそれぞれ支えていることが非線形成長理論によって明らかとなっているため、これらの共鳴電流が繰り返し現れることが、特徴的な波動放射を支えていることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、従来より目的としていた、高エネルギーイオンの散乱過程の解析、トリガード放射の生成過程の詳細な部分を明らかにできた。さらに、衛星観測データ解析との共同研究も進めることができ、論文の出版も十分に行えていることから、(1)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
高エネルギー電子との相互作用や、ERG衛星に搭載される予定の波動粒子相互作用解析装置の実証実験をシミュレーション上で再現し、内部磁気圏の高エネルギープラズマダイナミクスの理解を深める。また、シミュレーションコードを非一様グリッドを用いた多次元モデルに発展させ、より一層現実に沿ったシミュレーションを行うことを試みる。
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Research Products
(6 results)