2012 Fiscal Year Annual Research Report
主要針葉樹のテルペン類放出速度の定量化と気候変動がその放出に及ぼす影響の評価
Project/Area Number |
12J10958
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
望月 智貴 静岡県立大学, 生活健康科学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | 生物起源揮発性有機化合物(BVOC) / 生物起源二次有機エアロゾル / 針葉樹林 / フラックス / 人為起源揮発性有機化合物(AVOC) / オゾン |
Research Abstract |
植物から放出された生物起源VOC(BVOC)は大気中で反応を経た後、一部は二次有機エアロゾルを形成するが、その割合はフィールド測定(森林スケール)で明らかになっていない。また、森林大気の測定で観測されている種々の人為起源VOC(AVOC)の森林への沈着量の測定データは世界的に見ても少ない。本研究は、森林生態系から放出されたBVOCがBVOC由来二次有機エアロゾル生成に関与する制御要因を明らかにすること、群落スケールでのAVOC沈着フラックスの定量化を目的とし、以下の項目の集中観測を7月にカラマツ林、8月にアカマツ林で行った。 1.林上でBVOC,AVOCフラックスを簡易渦集積法で1時間毎に測定。 2.林内(樹冠直下)の全エアロゾルをハイボリュームエアサンプラーを用いて3時間毎に採取し、BVOC由来SOAトレーサー成分を定量分析。 3.BVOC,AVOC濃度の6高度分布を3時間毎に測定。 4.BVOCと反応性のあるO_3,NO_x濃度の4高度分布を15分毎に測定。 両サイトにおいて、カラマツ、アカマツから放出されるモノテルペン種はα-ピネンが主であり、その酸化生成物としてピノン酸、ピン酸、3-ヒドロキシグルタル酸)が検出された。また、林内植生からは両サイトともイソプレンが放出されており、その初期酸化生成物(メタクロレインとメチルビニルケトン)と高次酸化生成物として2-メチルグリセリン酸、2-メチルテトロール類が検出された。 BVOC由来二次有機エアロゾルトレーサー濃度は日中高くなる傾向があり、それらの反応は日中に森林域で盛んに起こっている。合わせてオゾン濃度の上昇により反応が促進される傾向が見られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
森林上でタワーを用いたBVOCフラックスとエアロゾルの集中観測を2012年夏季にカラマツ林とアカマツ林で行った。BVOCに関するデータは分析・解析が終了し、エアロゾル分析・解析については7割ほど終了した。解析を進めている。今後、気温、湿度、日射、オキシダント濃度、更に都市大気流入の影響などBVOC由来二次有機エアロゾルトレーサー生成に関与する制御要因をより詳細に明らかにしていく。
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Strategy for Future Research Activity |
残りのエアロゾル試料を分析、解析を行い、BVOC由来エアロゾル生成の動態とそれに関連する環境条件を明らかにする。 平成24年度、OTCを用いた高濃度CO_2、オゾンの長期曝露がグイマツ雑種F1のBVOC放出に及ぼす影響を測定した。測定自体は順調に進行したが、BVOC放出データにはバラつきが大きく一定の傾向が見られなかった。 引き続きOTCを用いた実験では、高濃度CO_2の長期曝露がスギのBVOC放出と精油含有量、成長量に及ぼす影響を評価するための実験を開始している。スギは今後植林する可能性のある少花粉スギクローン苗を用いている。
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Research Products
(7 results)