2012 Fiscal Year Annual Research Report
チオアミドダイレクトアルドール反応を基盤とする実践的ポリオール合成研究
Project/Area Number |
12J10977
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川戸 勇士 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 不斉触媒 / アルドール反応 / チオアミド / アトルバスタチン |
Research Abstract |
私は今年度、先に報告したチオアミドを求核種前駆体とする触媒的不斉ダイレクトアルドール反応のさらなる応用展開として、本反応を鍵反応とする脂質異常症治療薬アトルバスタチン合成、及びanti選択的反応の開発を行った。まず、アトルバスタチン合成に関して報告する。2011年に報告した第一世代合成法では、本ダイレクトアルドール反応を鍵として14工程にてアトルバスタチン合成を達成したが、本法では高価な不斉配位子の利用の他、保護基の着脱、及び合成終盤での窒素源の導入に伴う工程数の長さに改善の余地を残していた。今回私は、これらの諸問題を(1)配位子の効率的回収、(2)分子内オキシマイケル反応によるsyn-1,3-ジオールの形成、及び(3)チオアミドの窒素源としての利用、の3点を組み込んだ新規合成経路を構築することで解決し、プロセス合成へ応用可能なレベルでの不斉配位子の再利用と9工程でのアトルバスタチン合成を達成した。続いて、aDti選択的反応の開発について報告する。通常、アルドール生成物の剛syn,antiの作り分けは、エノラート生成段階でのE,Z制御により行うが、チオアミドはその立体障害からE-エノラート生成が極めて不利である。今回私は、求核種前駆体としてE-エノラートを生成するチオラクタムを選択することにより、種々の脂肪族及び芳香族アルデヒドに対するanti選択的触媒的不斉ダイレクトアルドール反応を開発した。また、得られたアルドール生成物のチオアミド部位の変換により、対応する様々な有用生成物への誘導も行った。 今後これらの誘導体、及び既に報告しているチオアミドのsyn選択的触媒的不斉ダイレクトアルドール反応を基盤とした有用有機化合物群の合成検討を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果を論文発表および学会発表にて報告し、高い評価を得ていることからも計画は概ね期待通り進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は特にチオアミドダイレクトアルドール反応の医薬品合成への応用として、これを鍵反応とする高脂血症治療薬アトルバスタチン合成を行った。本合成では、チオアミドを効果的なC2N1ユニットとして利用できたことが成功の鍵であった。一方で、チオアミドの変換に伴う硫黄由来の悪臭、および反応条件の厳しさが課題となっている。そこで、これらを解決する対応策として、アルドール反応における求核種前駆体に、チオアミドに代わる基質、具体的にはアセトニトリルを適用することも考慮にいれる。ニトリル基はチオアミドと同様、高いソフトルイス塩基性を有しており、チオアミドアルドール反応で得られた知見を生かして効果的に求核的活性化を行うことも可能と考える。また、ニトリルの官能基変換多様性から、研究課題の実践的ポリオール合成も十分に検討可能である。
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Research Products
(6 results)