2012 Fiscal Year Annual Research Report
カリウムチャネル活性を高感度に検出する複合型カリウムプローブの創製
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12J11023
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平田 智也 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 蛍光プローブ / カリウムイオン / イメージング |
Research Abstract |
本年度は、これまでに開発したタンパク質結合型K^+プローブに対し、複数の親水性官能基を新たに導入することで細胞外滞留性の向上を達成し、標的細胞の細胞膜外側へ集積するK^+プローブの開発に成功した。 このK^+プローブは細胞膜上にて細胞外液のK^+濃度変化に選択的に応答したものの、細胞ごとに蛍光強度にばらつきがあり、蛍光強度からK^+濃度を算出することは困難であった。そこでK^+プローブと競合的に標的細胞と結合し、K^+非依存的に蛍光を発する分子の蛍光強度を基準に細胞ごとのK^+プローブの蛍光強度を標準化することで、蛍光強度から細胞外K^+濃度を算出可能なレシオ測定系を設計した。これにより、異なる細胞間でも細胞外液のK^+濃度に応じた同程度の蛍光レシオ値が観測可能となった。このことはK^+チャネル活性の指標にK^+濃度を測定する際の精度を向上させる重要な特長である。現在までにこの測定系を用いて、カバーガラスで細胞外液量を限局した条件下にてK^+ionophoreの添加に伴うK^+流出の検出に成功している。また、脳切片でのK+イメージングの初期検討を行った。まず文献既知の細胞外滞留型K^+プローブをマウス脳切片へ負荷し、電気的な刺激を与えたところわずかに蛍光強度が上昇し、阻害剤実験によりNMDA型グルタミン酸受容体を介したK^+流出に由来することが示唆された。しかし変化量は微小で、光退色や自家蛍光により正確な解析は難しく、2光子励起顕微鏡を用いた観察では励起効率が低く蛍光強度変化は捉えられなかった。そこでK^+イメージングの精度向上を目指し、2光子励起に適したK^+プローブの開発に着手した。具体的には、2光子励起が高い効率で起こる環境感受性蛍光団を母核としたK^+プローブを新たに設計・合成した。このK^+プローブは蛍光増加量や細胞系での局在制御に改善の余地が残るものの、設計通りに水溶液中でK^+濃度を選択的に検出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
K^+プローブの合理的な改良により細胞膜上でK^+濃度を測定可能な系の開発を早々に達成し、投稿論文の準備を進めつつその応用可能性を様々な方向から検証している。脳切片を用いたK^+イメージングの検討や、そこでの実験事実から得た問題意識を発展させた新たな設計のK^+プローブの開発にも着手し、実用的なケミカルツール開発の端緒を掴んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞膜局在型K^+プローブについては、K^+チャネルを介したより生理的な条件でのK^+流出の検出およびマルチウェルプレートを用いたスクリーニングへの応用可能性の検討を行っていく。また2光子励起型K^+プローブについては、現在までに開発したプローブを改良することで、より大きな蛍光増加の達成と測定系における細胞外滞留性の向上を行い、より実用的な2光子励起K^+プローブの創製および応用に取り組む。
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Research Products
(2 results)