2012 Fiscal Year Annual Research Report
遊泳微小生物の生理機能にあたえる自発的対流形成の効果
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12J11036
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
鹿毛 あずさ お茶の水女子大学, 大学院・人間文化創成科学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | 生物対流 / 重力生物学 / 増殖 / 細胞形態 / テトラヒメナ |
Research Abstract |
生物対流現象とは、微小生物の遊泳と地球重力の作用によって起こる自己組織化現象である。この生物対流現象の生理的意義の解明を目指し、対流形成の有無が微小生物の増殖に与える影響を検討した。繊毛虫Tetrahymena thermophilaを用い、培養容器の検討および対流形成阻害方法の検討を行った。培養容器内部で生物対流を形成させるためには、厚み3-10mm程度の培養容器を用いる必要がある。この条件を満たし(厚み約5mm)、密封容器であり無菌操作が可能、かつ取り扱いが簡便なことから、宇宙実験の地上対照実験用細胞培養カセット(日本宇宙フォーラム提供)を採用した。生物対流はある一定の細胞密度を超えると自発的に形成される。そのため、対流形成の効果をはかるためには対流形成を阻害する必要がある。この対流形成阻害の方法として、重力生物学の分野でしばしば使用される1次元クリノスタットを応用し、容器そのものを回転させる方法を採用した。まず対流形成を阻害できる最小の回転速度を求め、この回転速度を用いて対流形成を阻害し、静置したコントロール(対流形成群)と比較した。対流形成群と対流阻害群における増殖速度を比較したところ、対流形成群の方がわずかに大きいという傾向が得られている。対流形成が生理機能に与える影響として、細胞形態についても調べた。細胞形態については、対流形成群と阻害群で明確な差が見られなかった。いずれもフラスコで撹拌する通常の培養方法に比べ、短軸/長軸比が大きくなる(細胞が「太くなる」)という結果が得られた。さらに、単細胞緑藻クラミドモナスの生物対流形成が増殖に与える影響を調べるための第一歩として、クラミドモナスの生物対流パターンに与える光の影響を検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生物対流が微小生物の増殖に与える影響を検証するための培養容器と対流阻害方法を選定することができた。そのため、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は対流パターンのより詳細な解析(顕微鏡観察等)と組み合わせることで、生物対流の生理的意義についてより厳密な議論を目指したいと考えている。
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Research Products
(4 results)