2012 Fiscal Year Annual Research Report
増殖組織包括的遺伝子解析で同定したペリオスチンを標的とした糖尿病網膜症治療薬開発
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12J11100
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
有馬 充 九州大学, 医学研究院・眼科学, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 増殖糖尿病網膜症 / ペリオスチン / 線維性増殖組織 / マクロファージ |
Research Abstract |
線維血管増殖は糖尿病網膜症等の眼内増殖疾患の主要病態である。この病態におけるペリオスチンの作用機序を明らかにするために以下の実験を行った。 まず網膜血管新生とペリオスチンの関係を明らかにするために、酸素負荷網膜血管新生マウスモデルを使用した。ペリオスチンKOマウスでは病的血管新生が抑制されていた。免疫染色にてペリオスチンは網膜内マクロファージ(MΦ)と共染色されており、KOマウスでは血管内皮細胞の基底膜となるファイブロネクチンの構築が乱れていた。 次に線維性増殖とペリオスチンの関係を検証するために、レーザー光凝固による脈絡膜血管新生マウスモデルを使用した。KOマウスでは線維性増殖が抑制されていた。免疫染色にてペリオスチンは、MΦ及び網膜色素上皮細胞(RPE)と共染色された。我々はペリオスチンがRPEの筋線維芽細胞への形質転換を促すことを確認している。2つの動物モデルの結果から、網膜内でMΦがペリオスチンを産生し、基底膜の構造を整え、RPEの筋繊維芽細胞への形質転換を促すことで、線維血管増殖組織形成に寄与していることが示唆された。 手術時に採取したヒト増殖組織の免疫染色でも、ペリオスチンはMΦとRPE由来筋繊維芽細胞と共染色される。 我々はペリオスチンを産生するマクロファージがM2 MΦというサブタイプに属することを突き止めた。また、in vitroにてヒト単球細胞に糖尿病網膜症患者由来の硝子体液を添加すると、M2 MΦに分化し、ペリオスチンを産生することも確認した。今後、M2 MΦへの分化を促す分子の検索も行っていく。 また、ペリオスチンを標的とした新しい核酸医薬(1本鎖RNA医薬)の開発に成功した。すでに上記2つの動物モデルで病的網膜血管新生・線維性増殖の抑制効果を確認している。臨床応用に向けて、より効果的な配列及び臓器安全性の確認も行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究計画として、ペリオスチンの血管新生・線維性増殖における作用をノックアウトマウスを用いて同定することを挙げていたが、ペリオスチン発現の局在やペリオスチンの関与する分子経路を具体的に解明することができた。また新規核酸医薬の開発に成功し、動物疾患モデルでの増殖組織形成抑制効果も確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終目標は、ペリオスチンをターゲットとした分子標的治療薬の臨床応用である。現段階においても新規核酸医薬の効果はin vitro,in vivo双方で確認できているが、今後より効果的な核酸配列を見出し臓器安全性についても検証を行っていく。
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Research Products
(3 results)