2013 Fiscal Year Annual Research Report
増殖組織包括的遺伝子解析で同定したペリオスチンを標的とした糖尿病網膜症治療薬開発
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12J11100
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
有馬 充 九州大学, 医学研究院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2012 – 2014-03-31
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Keywords | ペリオスチン / 糖尿病網膜症 / 加齢黄斑変性 |
Research Abstract |
増殖糖尿病網膜症(DR)や加齢黄斑変性(AMD)等の主要病態である、線維血管増殖組織形成におけるペリオスチン(PN)の作用機序を検証した。まず網膜血管新生とPNの関係を解明するために、酸素負荷網膜血管新生マウスモデルを使用した。PNノックアウトマウス(KOマウス)では病的血管新生が抑制され、免疫染色にてPNは血管内皮細胞とマクロファージ(MΦ)に染色された。KOマウス硝子体へPNを注入すると、野生マウスと同程度の病的血管新生を認めた。またin vitroにてVEGF及びTGFβで網膜血管内皮細胞を刺激すると、PN産生上昇と管腔形成促進を認めたが、PN抑制により管腔形成能は有意に低下した。以上の結果から、血管内皮細胞やMΦで産生されたPNが網膜血管新生に寄与することが示唆された。次に線維性増殖とPNの関係を検証するために、脈絡膜血管新生マウスモデルを使用した。KOマウスでは線維性増殖が抑制され、免疫染色にてPNは血管内皮細胞、MΦ及び網膜色素上皮細胞(RPE)と共染色された。in vitroにおいてPN抑制による増殖組織制御の可能性をRPEを用いて検証した。TGFβ刺激により誘導される遊走能、接着能の亢進は、PN抑制により阻害された。またDR患者から採取した硝子体液で培養したRPEでは、増殖、遊走、接着能が有意に亢進したが、PN抑制により阻害された。以上の結果からPNは線維性増殖にも寄与していることが示唆された。DR、AMD患者から採取した線維血管増殖組織のPN免疫染色を行ったところ、両者とも血管内皮細胞とMΦ、RPEに染色され、発現パターンの類似を認めた。また、PNを標的とした新規の核酸干渉技術である一本鎖長鎖nkRNA (PN-nkRNA)の安全性についてもマウスを用いて検討を行った。組織学的に網膜及び多臓器毒性は認められず、網膜電気生理学的検査でも異常は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでに、マトリセルラー蛋白質の1つであるペリオスチンが糠尿病網膜症(DR)の病態に深く関与していることを示したが、その本態は眼内における線維血管増殖組織の形成促進作用である。我々は、ペリオスチンを標的とした新規の治療薬開発を目的とし、新規の核酸干渉技術である一本鎖長鎖"nkRNA"に着目し、すでにペリオスチンnkRNAの開発に成功している。また、DRと並び成人失明原因の上位を占める加齢黄斑変性(AMD)においても、線維血管増殖組織の形成が失明の原因になる。つまりDRとAMDの病態には共通事項が存在すると考えられる。AMDのin vivo、in vitro実験系においてペリオスチンnkRNAの効果を検討したところ、興味深いことにAMDにおいても線維血管増殖組織の形成抑制作用が認められた。これらの結果から、ペリオスチンを介したシグナルは眼内における線維血管増殖組織形成のcommon pathwayである可能性があり、ペリオスチンを標的とした分子標的治療薬開発は眼疾患において幅広い臨床応用が期待できるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
我々はペリオスチンを標的とした新規の治療薬開発を目的として、新規の革新的核酸干渉技術である一本鎖長鎖の「ボナック核酸・nkRNA」に着目し、ペリオスチン標的nkRNAの創製を開始した。すでにヒト・マウスにおいて数種類の候補配列の作製を行い、mRNAレベルでの抑制効果の比較検討を行い、最強配列の選定が終了している(特許出願済み)。引き続き動物を用いて安全性を評価し、糖尿病網膜症および加齢黄斑変性患者を対象とした臨床試験に向けて、速やかに研究を展開する予定である。
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