2012 Fiscal Year Annual Research Report
イネいもち病菌におけるDNA二本鎖切断修復による進化機構の解明
Project/Area Number |
12J11224
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
荒添 貴之 明治大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | イネいもち病菌 / DNA二本鎖切断 / 体細胞相同組換え / 遺伝的多様性 / 病原性変異 / 遺伝子ターゲッティング |
Research Abstract |
本研究では無性的な生活環を有するイネいもち病菌の遺伝的多様性および病原性変異が,体細胞分裂時に生じるDNA二本鎖切断(DSBs)とその修復過程(相同組換え)において生じるかどうかの検証を目的とする。イネいもち病菌のDSBs修復機構については有用な知見が得られていないことから,本年度は相同組換えモニター系および希少制限酵素遺伝子1-Sce Iを用いて,イネいもち病菌ゲノムへの人為的DSBsの導入とその修復機構の基礎的解析をおこなった。相同遺伝子がゲノム内に散在しているイネいもち病菌系統においては,活性酸素誘導剤等の薬剤ストレスおよびDSBsの導入により,非交叉型の相同組換えが有意に誘導されることを見出した。同様に,相同組換えに必要な相同領域の長さや遺伝子のコピー数等の諸条件についても明らかにした。相同配列が存在しない系統においては,主に遺伝子内部またはその遺伝子領域全域が高い割合で欠失するのに対して,相同配列を有する系統においては欠失の割合の減少に伴い,相同組換え修復の割合が上昇することから,体細胞相同組換えはゲノムの安定化に寄与していると同時に,多様性の創出にも貢献していることが考えられた。 上記の知見から,DSBsの人為的導入が遺伝子ターゲッティング法の高効率化に応用することが可能でると考え,相同組換えモニター系を用いた遺伝子ターゲティング効率の簡易評価法を構築した。その結果,外来DNAの導入と共に標的遺伝子内にDSBsを誘導することで,遺伝子ターゲッティング効率を大幅に上昇させることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
DSBs修復過程において生じる遺伝的変異は,自然界で確認されているイネいもち病菌の遺伝的多様性と非常に類似していることを示した。また,これらの知見を応用することで,新たな遺伝子ターゲッティング法への応用に発展させることに成功し,当初の計画以上に進展したと評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に得られた知見から,イネいもち病菌の進化がDSBsとその修復過程によって生じることの実証をおこなう。また,実用的な高効率遺伝子ターゲッティング法の確立を新たな目標として設定する。これらの目標を達成するためには,特定の遺伝子領域に自由にDSBsを導入することが必要となる。本研究では近年注目を集めているtranscription activator-like effector nucleases(TALENs)を用いて更なる研究の推進を計る。TALENsにおいては既に,イネいもち病菌用の作成ツールを構築し,適用可能であることを実証している。
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Research Products
(4 results)