2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J11238
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
田中 翼 東京芸術大学, 大学院・美術研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 自動作曲 / 音楽理論生成 / 音階 / 旋法 / 旋律法 / 対位法 / 音楽情報検索 |
Research Abstract |
本研究の目的は、個々の音楽作品のありようを深層構造から規定する音楽理論をコンピュータを用いて生成し、新しい音楽スタイルを創出することである。それによって、人間の創意からの自律を根本的に進めるような自動作曲を実現し、芸術的な創造を科学的に捉えられるようにすることを目指している。生成対象の音楽理論としては、(1)旋律法、(2)サウンドファイルの対位法、(3)旋法(音階)を扱っている。平成24年度の成果としては以下のようなものがある。(1)の旋律法に関する成果としては、完成した楽曲を摸倣するのではなく、人間の作曲者の作曲のプロセスを摸倣することを通じて、未知の旋律法を創発させるアルゴリズムを構築した。生成した旋律法に基づく楽曲に対する聴取・評価実験により、パラメータを変化させることで、旋律スタイルの評価がどう変わるかを明らかにし、生成される旋律スタイルのクオリティをパラメータでコントロールできるようになった。(2)のサウンドファイルの対位法については、素材となるサウンドファイルの音響分析によって特徴を抽出し、特徴の検索によってサウンドファイルの断片を垂直的、水平的に組み合わせるという、素材に適した対位法を自動的に構成するアルゴリズムを開発した。成果発表のため個展を開催し、このアルゴリズムによる音楽作品を提示した。この研究により、従来の創作者による主観的で手探りの音の組み合わせ方に対して、一つの客観的な音の組織化方法を示し、素材の検索という自動化を導入した。それは情報技術の時代の音楽理論の新しいあり方を示す重要な貢献だと考える。(3)の旋法については、感情を表現するために適した旋法を、人間からの評価値を用いたインタラクティブな強化学習アルゴリズムにより獲得する手法を開発した。現在、詳細な評価実験を計画しているが、それが成功すれば、音楽における感情表現の音楽理論的な基礎の確立につながるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究成果は、生成する音楽理論の具体的な目標として掲げた3つの対象すべてをカバーしている。項目9の(1)に関してはすでに完了しており、(2)および(3)についてはもう少しで完成する段階にある。したがって、全体としては順調だと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策としては、項目9の(2)に関しては、修了制作展に向けて作品のブラッシュアップを図り、手法の解説ポスターとともに展示する計画である。(3)に関しては、確立した旋法の生成手法に基づく評価実験を現在構想中であり、それを実施し、成果を論文にまとめて発表する予定である。
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Research Products
(3 results)