2012 Fiscal Year Annual Research Report
法の素人の量刑判断に関する実証的研究 -直感から理性へ-
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12J40061
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
綿村 英一郎 慶應義塾大学, 文学部, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 量刑判断 / 応報的動機 / 相場 / 死刑 / 説示 / 裁判 / 裁判員 |
Research Abstract |
平成24年度は、(1)今後の研究に使用する実験材料の作成、および(2)基礎的データの収集を行った。 本研究の大きな目的は、法の素人の量刑判断の検証である。そのためにはまず、実際の刑事裁判に近い判断材料を(参加者の)素人に見せる必要がある。そこで(1)では、法の専門家の意見に基づき、実際の裁判とほぼ同じような裁判ビデオを作製した。今後はこの裁判ビデオを用いた研究を行うことにより、実際の裁判にも応用可能な科学的知見を提供することが可能となる。 さらに(2)では、素人の判断に対する裁判官の説示および量刑相場の影響に関して、計5回の質問紙実験を行った。裁判官の説示に関する実験では、大学生の参加者を対象として、複数の判断ポイント(例.被告人の再犯可能性)を考慮し評価させたうえで、慎重に量刑を判断するように求めた。その結果、1つの実験では、そうした慎重な判断を促す説示が参加者の判断をコントロールできていることが示された。しかし、別の実験ではその結果を追試できなかった。今後は(1)で作成した(より実際の裁判に近い)判断材料を用い、一般市民を参加者としたより本格的な実験を行う予定である。量刑相場に関する実験では、まず、グラフとして示された量刑相場のどの要因が素人の判断に影響するのかという点を探索的に検証した。その結果、グラフの視覚的なピークが参加者の判断に影響しやすいことが示された。すなわち、参加者の判断は、最も多くの被告人が科された懲役刑の年数へと収束する傾向が示された。今後は、本研究のデータをふまえ(1)の判断材料を用いた本格的な検証を行う。 その他、本年度は、3つの実験により量刑判断にはたらく応報的動機や死刑の判断についての検証を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の目的である「実験材料の作成」に関しては達成した。さらに、翌年度以降の基礎的データも収集できたという点では当初の計画以上の進展があったとみなすことができる。ただし、研究結果を学会誌・学会大会等の場で発表するという点においてはまだ十分ではなかったとの反省がある。
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Strategy for Future Research Activity |
応用的側面を重視した研究を継続する。具体的には、より実際の裁判に近い材料・参加者を用い、実務的なインパクトを追求した研究を行う。その一方で、研究結果の応用的側面のみではなく、その心理学的考察を深め、罰という判断を通じた人間心理を明らかにする。さらに、責任の判断など関連する諸テーマについても積極的に取組む必要があるとも考えている。
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Research Products
(4 results)