2012 Fiscal Year Annual Research Report
小胞型D-セリントランスポーターの分子同定とその生理的意義および病態関連性の解明
Project/Area Number |
12J40095
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中込 咲綾 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(RPD)
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Keywords | D-セリン / NMDA受容体 / アミノ酸トランスポーター / シナプス / 神経細胞 / 海馬 / 脳 |
Research Abstract |
D-セリンは哺乳類中枢神経系に高濃度に存在し、NMDA受容体の生理的なコ・アゴニストと考えられているD型アミノ酸である。NMDA受容体は脳の高次機能や様々な神経疾患に関与していることから、D-セリンもまたこれらの機能や疾患への関与が考えられている。しかし、D-セリンの脳内における動態や生理機能については未だ不明の点が多い。特に、D-セリンはグリア細胞と神経細胞の双方に存在することが報告されており、それぞれが異なる機能を持つと考えられるが、その詳細は明らかになっていない。本研究では、D-セリン輸送活性を示す新規アミノ酸トランスポーターvAsc1に着目し、神経細胞に存在するD-セリンを標的にその生理活性の解明を試みた。 本年度の研究では、vAsc1特異的抗体を用いた組織学的解析により、この分子の脳内における詳細な分布が明らかになり、この分子が海馬に特に強く発現していることが分かった。海馬はNMDA受容体が豊富に存在し、記憶・学習に関与していると考えられており、D-セリンも同様にこれらの機能への関係が示唆される。更に、海馬神経細胞初代培養を用いてD-セリン放出量の測定を行ったところ、神経脱分極刺激によりD-セリンが放出されることが分かった。このD-セリン放出はvAsc1ノックアウトマウスより調整したサンプルを用いた実験では見られなかったことから、vAsc1がD-セリン放出に深く関与していることが示唆された。更に、海馬神経細胞初代培養と大脳皮質神経細胞初代培養の比較検討を行ったところ脳の部位によってD-セリン放出の制御機構が異なることが明らかになった。今後は脳スライスを用いて電気生理刺激後のD-セリン放出量測定を行うと共に、D-セリンの放出その脳内における生理機能、病態との関連についてノックアウトマウスを用いた解析を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した実験計画はおおむね達成した。これに加え、D-セリン放出実験において、当初予定していた海馬神経細胞初代培養だけでなく、大脳皮質神経細胞初代培養も用いて比較検討を行ったところ、想定外の知見を得ることが出来た。これをきっかけとして、今後の研究に新たな展開が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は神経細胞初代培養だけでなく、生体を用いたin vivoにおける実験を進め、D-セリン及びvAsc1の生理的機能及び病態との関連を明らかにする。生体を用いた実験は培養系とは異なり長期にわたると予想されるが、既にノックアウトマウスは完成しており、初代培養を用いた実験において得られた基礎データをもとにより効率的な実験系を組むことで解決できると考えている。 更に、vAsc1と相互作用するタンパク質についてプロテオミクスを用いた解析を行う。申請者はプロテオミクス解析の経験はないが、研究室では既に質量分析をはじめとする高度なタンパク質解析を行う設備・人材が整っており、研究推進に何ら問題はない。
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Research Products
(2 results)