2013 Fiscal Year Annual Research Report
小胞型D-セリントランスポーターの分子同定とその生理的意義および病態関連性の解明
Project/Area Number |
12J40095
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中込 咲綾 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(RPD)
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Keywords | D-セリン / NMDA受容体 / アミノ酸トランスポーター / シナプス / 神経細胞 / 海馬 / 脳 |
Research Abstract |
脳内においてNMDA受容体の生理的なコ・アゴニストと考えられているD-セリンは、記憶・学習や統合失調症など、脳の高次機能や様々な神経疾患に関与することが示唆されている。しかし、D-セリンの脳内における動態や生理機能の詳細については未だ不明の点が多い。特に、D-セリンはグリア細胞と神経細胞の双方に存在することが報告されており、それぞれが異なる機能を持つと考えられるが、その詳細は明らかになっていない。本研究では、D-セリン輸送活性を示す新規アミノ酸トランスポーターvAsc1に着目し、神経細胞に存在するD-セリンを標的にその生理活性の解明を試みた。 本年度は、昨年度特異性を確認した抗体を用いて電子顕微鏡解析を行い、vAsc-1がシナプス小胞に存在することを組織学的に確認出来た。また、昨年度脱分極刺激により神経細胞シナプス小胞からのD-セリン放出を確認したが、本年度はこの実験結果を基に神経細胞由来D-セリンの脳内における生理的役割を解析した。この結果、NMDA刺激によって引き起こされる細胞内シグナル分子ERKの活性化が、シナプス小胞D-セリントランスポーターvAsc-1KOマウスでは見られなかったことから、シナプス小胞から放出されるD-セリンがNMDA受容体下流の活性制御に深く関与していることを確認した。同時に、この結果は、シナプス小胞から放出されるD-セリンがシナプス内NMDA受容体下流シグナル伝達の活性制御に関与する可能性を示唆するものであり、今後はNMDA受容体の局所制御と神経機能との関連解明が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した実験計画はおおむね達成した。これに加え、野生型マウスとvAsc-1ノックアウトマウスではNMDA受容体下流のシグナル伝達活性化が異なるという、想定外の知見を得ることが出来た。これをきっかけとして、D-セリンと高次機能や神経変性疾患と関連をより具体的に明らかに出来ると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は記憶・学習及び神経変性疾患の培養モデル・動物モデルを用い、生体現象により近い実験系においてD-セリン及びvAsc1の生理的機能及び病態との関連を解析する。これらの培養モデル、動物モデルは前年度までに既に検討を行い、十分に解析可能な段階である。これらのモデルを用いて野生型マウス、vAsc1ノックアウトマウスの表現型比較を行い、脳内における神経細胞由来のD-セリンの役割を明らかにする。
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Research Products
(1 results)