2012 Fiscal Year Annual Research Report
幹細胞因子が制御するストレス応答による老化制御機構
Project/Area Number |
12J40105
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
仁田 英里子 慶應義塾大学, 医学部, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 造血幹細胞 / 老化 / アポトーシス / ストレス / TERT / p53 / ASPP1 / 白血病 |
Research Abstract |
当初の計画通り、造血幹細胞のストレス応答と質的管理による老化制御の分子機構を解明するため、研究計画に従って遺伝子変異マウスを用いて実験を実施した。 アポトーシスを選択的に誘導するp53の共役因子ASPP1が造血幹細胞に特異的に発現することを見出したため、ASPP1がアポトーシスを介した健全な造血幹細胞プールの維持に関与すると考え、ASPP1ノックアウトマウス造血幹細胞を解析しその可能性を検証した。ASPP1欠損造血幹細胞を用いた骨髄移植では、野生型に比しドナー生着率が高く、連続移植によってその差は顕著になった。その時の細胞周期を解析すると、ASPP1欠損造血幹細胞は野生型に比し骨髄移植ストレス後も静止期に維持されていた。これらの結果よりASPP1はストレスを受けた造血幹細胞の静止状態を失わせ、幹細胞の長期再構築能を抑制することが示唆された。 さらにASPP1欠損造血幹細胞は野生型より高い放射線照射後のアポトーシス抵抗性を有することを示し、ASPP1が造血幹細胞においてDNA損傷応答性にアポトーシスを誘導することを明らかにした。しかしその時、ASPP1欠損造血幹細胞ではDNA修復終了後も重度の損傷を負った細胞がより多く残存しており、ASPP1は修復不可能な損傷を負った造血幹細胞をアポトーシスによって除去することで造血幹細胞を遺伝的不安定性から保護していると考えられた。 以上の結果より、ASPP1が細胞ストレスに応じて造血幹細胞を静止期から細胞周期に移行させ、DNA損傷を負った造血幹細胞にアポトーシスを誘導する分子であることを我々は初めて明らかにした。このようなASPP1の機能は幹細胞集団が正常に機能するための恒常性維持に不可欠と考えられ、ASPP1の欠損は老化、造血不全や白血病につながる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ研究計画通りの進展を得られていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果によりASPP1が正常造血の恒常性維持に貢献する制御機構が明らかになったため、この結果を確定してまとめると共に、さらにASPP1が造血幹細胞において担うこの機構がp53を介しているか調べるため、ASPP1・p53ダブルノックアウトマウスを作製し、造血幹細胞移植系を用いた造血解析および白血病発症について調べる。
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Research Products
(1 results)