2013 Fiscal Year Annual Research Report
中枢嗅覚系における並列神経回路の抽出および機能解析
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12J40106
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
毛利 亮子 国立遺伝学研究所, 総合遺伝研究系, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 嗅覚系 / 回路形成 / 行動 |
Research Abstract |
嗅球神経は、胚発生中期から後期にかけて、神経前駆細胞から神経細胞へと分化する(神経細胞の誕生)。嗅球神経の誕生日が、その回路形成や機能決定に重要な役割を持つかを調べるため、本年度は、任意の誕生日の嗅球神経について、解剖学的・生理学的解析を試みた。 1-1. 二次嗅覚系における並列経路の抽出の試み 初年度に作成したトランスジェニックマウスは、残念ながらGFP蛍光のシグナルが弱く、軸索投射パターンを詳細に解析することが困難であった。また、タモキシフェン投与により誘導されるGFPの発現も、誘導頻度が低かったため、多くの嗅球神経をラベルしたり除去したりするのに適していないと思われた。そこで今年度は、嗅球神経をより多くより強くラベルするために、いくつかの改良を加えたトランスジェニックマウスを作成し、それを用いて嗅球神経の形態を解剖学的に解析した。その結果、僧帽細胞では、その誕生時期によって樹状突起の形態が異なることが明らかになった。これは、誕生時期によって生理機能が異なる可能性を示唆している。 1-2. 二次嗅覚系における並列経路の生理学的解析 嗅覚情報は、匂い識別、記憶、摂食行動、危険回避行動、情動反応、生殖行動などの、様々な生理機能に深く関与している。本研究では、タモキシフェン依存的に神経細胞を除去するシステムを利用し、ある誕生時期の嗅球神経を選択的に除去することで、二次嗅覚系から抽出された神経回路を生理学的に解析する予定である。本年度はその前段階として、多くの嗅球神経が除去されたマウスについて、嗅覚が関与するいくつかの行動を解析した。 嗅覚学習のテストとしては、シクロヘキシミドを使った嫌悪学習をおこなった。マウスは最初、シクロヘキシミドの匂いは嫌いではないが、その匂いを嗅ぎ、不快な味を経験することで、シクロヘキシミドの匂いを避けるようになる。嗅源検知能力は、埋められた餌を見つけるまでの時間を測定することで、性周期ば膣スメア法によって調べた。行動解析の結果、多くの嗅球神経が除去されたマウスでは、これらの行動に明らかな異常は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度の研究で、新しく作成したトランスジェニックマウスを用いて、今後は、研究を強力に推進し、成果を蓄積する方向にシフトできるようにする。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、誕生時期の異なる嗅球神経の形態を解析した結果、僧帽細胞では、その誕生時期によって樹状突起の形態が異なることが明らかになった。これは、誕生時期によって生理機能が異なる可能性を示唆しており、他の嗅球神経でもこのような違いが見られるのかどうかを、さらに解析していく予定である。また、今後の生理学的解析については、匂い識別、食欲や攻撃性などについても解析する予定であるが、既存の嗅覚行動テストの多くは、大まかな嗅覚機能全体を測定する為に作られたものであり、二次嗅覚回路の一部を破壊した時の異常を検出するためには適していない可能性が高い。来年度は、まずは多くの嗅球神経を除去したマウスで異常が見出せるよう、三次性の神経回路を熟慮したり、ヒトの心理学的研究を参考にしたりして、並行回路の機能の本質を検定できるようなテストを考案したい。
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