2012 Fiscal Year Annual Research Report
T細胞分化可塑性の分子メカニズムの解明と免疫疾患治療への応用
Project/Area Number |
12J40125
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
井上 直子 慶應義塾大学, 医学部, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 炎症性T細胞 / 抑制性T細胞 / リプログラミング / エピジェネテック修飾 / 炎症制御 / 可塑性 / 自己免疫疾患 / 抗原特異性 |
Research Abstract |
T細胞理プログラミングの背景と目標:気管支喘息、花粉症等の免疫アレルギー疾患は、免疫過剰状態や免疫寛容が破綻したことにより、本来免疫系が反応しない自己抗原や花粉等に異常反応した結果である。本研究の目的は免疫応答の中心的役割を持つ炎症惹起を担うエフェクターT細胞(Teff)と炎症沈静化を担うFoxp3陽性抑制性T細胞(Treg)の免疫応答バランスの異常を修正しようとするものである。成熟したTeff細胞は自己タンパク質やアレルゲンに対する特異性を有するので、Teff細胞をTreg細胞に転換できれば、正常な免疫応答は保ったまま、原因抗原のみの炎症沈静化を誘導する理想的な治療方法となる。 1年目研究進行計画本申請は4つの研究段階からなる。そのうち、研究段階2を進めた。まずは培養分化させたTeff細胞、次に、大腸炎誘発マウスから採取したTeff細胞(大腸炎の主因)を、エピジェネティック修飾化合物を培地に添加することにより、Foxp3陽性Treg様細胞に転換する方法を開発する。研究段階3作成したFoxp3陽性Treg様細胞がin vivoで大腸炎誘発モデルマウスの症状を軽減させることができるのかを評価する。以上の2段階を行った。 1年目進捗研究段階2は終了し、現在研究段階3を行っている。Teffには大きく4つサブセットが知られている。少なくとも2サブセットからFoxp3陽性細胞Treg様細胞が得られ、これらは細胞増殖抑制能を持つことを示した。分化したTeff細胞がおそらく可塑的細胞状態を介してTreg様細胞へ分化することを示唆したことは新規のT細胞可塑性の発見になる可能性が高い。さらなる検証が必要である。 次年度目標研究段階4に掲げた、Teff細胞がTreg細胞にリプログラムできた分子メカニズムを解析することによって、新規な観念である可塑的な細胞状態の特性の詳細な検証をする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に沿って進めることができ流れは見えてきたが、まだ外部に発表できるほど確固なデータになりきっていないから。
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Strategy for Future Research Activity |
Ragノックアウトマウス(リンパ球を持たない)にナイーブT細胞を静注することにより作製した大腸炎モデルマウスのTeff細胞からin vitroで作製したFoxp3陽性Treg様細胞が、同様に作製した大腸炎モデルマウスの炎症を沈静化を示すのかを検討する。作製したFoxp3陽性Treg様細胞はin vitroでは抗CD3抗体刺激に非常に弱く死にやすいことがわかっている。この点を克服しなければマウスに導入しても死んでしまう可能性があるので、炎症沈静化を観察することは困難かもしれない。アポトーシスを抑制するためにp53 siRNA導入を試してみる。
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