2013 Fiscal Year Annual Research Report
T細胞分化可塑性の分子メカニズムの解明と免疫疾患治療への応用
Project/Area Number |
12J40125
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
井上 直子 慶應義塾大学, 医学部, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 抑制性T細胞 / リプログラミング / エピジェネテイクス / インターフェロンγ / Th17 / ヒストン修飾 / DNAメチル化阻害 |
Research Abstract |
ナイーブT細胞から誘導性抑制性T細胞(iTreg)を作製し免疫疾患治療や臓器移植の拒絶反応の軽減に適用できる事が多くのモデル系で示されている。しかし多くの自己免疫疾患では抗原が同定されていない。抗原特異的なエフェクターT細胞をTregに転換することが最も効果的な治療法になりうると考えられる。そこで高度に分化させたTh1やTh17からFoxp3陽性Tregを作製することを試みた。しかし一旦分化したTh1やTh17細胞は通常のTGFβ存在下の培養条件下ではFoxp3を発現誘導することはできなかった。そこでメモリー化を促進するためにTh1細胞を胸腺ストローマ細胞株Tst4フィーダー細胞上で培養したところ5%ほどの細胞がFoxp3陽性となった。さらにヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤(BIXO1294)、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤(5AzaC)、ヒストン脱アセチラーゼ阻害剤などのエピジェネティック阻害剤の添加によってさらにFoxp3陽性細胞が増加する条件を見いだした。これらの細胞をFoxp3でソーティングし遺伝子プロファイリングを行ったところ、CD25やCTLA4の発現などTregとして機能分子を発現していることがわかった。今後このようなreprogramed Tregが個体でも機能するのか検討する。さらに様々な薬剤の組み合わせを行ってTh17から最も効率よくiTregを誘導する条件を検討した。最も効率よく誘導する組み合わせとして5aza-dC、ATRA、Rapamycin、8-Br-cAMP、TWSll9という5つの薬剤を組み合わせることによって相乗的にTh17からFoxp3陽性Tregを誘導する効果が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分化したTh1やTh17細胞からFoxp3陽性細胞を誘導する培養条件を、様々なエピジェネテック試薬を用いて検討したところ、ある程度の割合でFoxp3陽性細胞を誘導することが出来た。しかし胸腺由来のnTregが増幅された可能性を否定する実験が必要である。また動物実験を行うに十分な細胞数を得る培養条件の検討も必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
分化したTh1やTh17などのエフェクター細胞から抑制性細胞を誘導することは長期免疫寛容を成立させる有力な方法と考えられており、世界的にも様々な試みがなされている。本研究では様々なエピジェネテック試薬を用いてTh1やTh17をFoxp3陽性細胞に転換することを目標としている。しかしその効率は未だ10%以下で非常に低い。また細胞死が誘導されるために動物実験を行うに十分な細胞数を得ることも難しい。転換効率をあげてかつ細胞死を抑制する方法を確立する必要がある。そのためには細胞死を抑制する薬剤の添加、あるいは遺伝子の導入もしくはノックダウンが必要と思われる。
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