2012 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属錯体のマトリックス振動分光における特異的希ガス効果の理論的解明
Project/Area Number |
12J40130
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小野 ゆり子 北海道大学, 大学院・理学研究院, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 希ガス化合物 / 赤外分光 / DFT / 高精度ab initio / VCI |
Research Abstract |
採用第一年度においては、まず対象とする系の全体像を得るため、まずDFTを用いて系統的に計算を行なった。高精度計算から得た構造と調和振動数を再現する汎関数を選び、計算を行なうこととした。PtCO及びPdCO分子に対し、DK3-QCISD(T)法による全電子計算を行い平衡構造及び振動数を算出して実験値との比較を行い、次に約40種類の汎関数と10種類の基底関数を組合せて行った。算出された値を実測値及び平衡状態近傍でのDK3-QCISD(T)法による結果と比較し、これを最も再現するPBEOMOL(0.75PBEx+0.25HF+1.0PW91c)/def2-TZVPPを用いポテンシャル曲面を作成した。DFT法によるPtCO分子の計算値はDK3-QCISD(T)法による計算値と比較しても遜色ない。PtCO分子のv(Pt-C-O)は412cm^-1であり、その倍音は826cm^-1であるが倍音の強度は基音の約1/30であり、実験において基音と見間違う程の強度はない。比較してArPtCO分子の場合v(Pt-C-O)は453cm^-1であり、その強度は0.1と非常に弱い。一方v(Pt-C-O)の倍音906cm^-1の強度は基音の10倍と倍音においては異常なほど強い。この振動数は既にPtCOのv(Pt-C-O)として報告されている916cm^-1とも近い。またCuF分子のAr,化合物は既に報告されているが、HeCuFをモデルとして計算を行なったところ、充分に強い結合が予測された。HeCuF分子についてDK3-CCSD(T)法による高精度計算によりPESを作成し、得られたPESより振動回転準位を予測した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
希ガスマトリックス分光実験で測定された遷移金属化合物の振動分光データが、希ガス原子が遷移金属化合物に結合した錯体に帰属されるべきとの観点から研究を進め、Arマトリックスで測定されたNiCO, PdCO, PtCOの振動数がそれぞれAr-NiCO, Ar-PdCO, Ar-PtCOに帰属されるべきであることを高精度ab initio計算に基づき示してきた。本年度は、特にAr-PtCO, Ar-PdCOについて、実験で報告されている基本振動数の値が倍音の準位に近いことに着目し、倍音を含めて強度の計算を行い、フェルミ共鳴の観点から実験でのアサインが間違っている原因を明らかにしている。さらにHe-CuFについても高精度ab initio計算とダイナミクス計算を組み合わせて理論的にスペクトルをシミュレートし、論文として発表している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度においては、DFT法を用いて対象分子のポテンシャルを作成し、振動CI計算を行い対象とする系の全体像を得ている。今後はポテンシャルの精度を上げるために、QCISD(T)法による全電子計算を行い、作成したポテンシャルを用いて振動CI計算を行い、実験と直接比較可能な精度での基本振動数の算出を試みる。
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Research Products
(2 results)