2012 Fiscal Year Annual Research Report
魚類の浸透圧調節に及ぼす水温の影響とその陸上養殖への応用
Project/Area Number |
12J40164
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井ノ口 繭 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(RPD)
|
Keywords | 塩類細胞 / ティラピア / 浸透圧 / プロラクチン / 培養 / 分化 |
Research Abstract |
硬骨魚にとって鰓は体液の浸透圧調節を担う器官の一つであり、鰓に存在する塩類細胞がイオンの調節に重要な役割を果たしている。本年度は、(1)塩類細胞におけるイオン輸送機能の制御機構と(2)塩類細胞の成熟過程という二つの観点に着目し研究を行った。 塩類細胞の機能変化は内分泌系と細胞外浸透圧の両因子により制御されていると考えられているが、in vivoの系を用いた実験ではその二つの影響を別々に検討することは困難であった。そこで本研究では鰓の組織培養系を用いて、細胞外浸透圧と内分泌系の影響を個別に検討することを目的とした。淡水のティラピアから鰓弁を取出し、多様な浸透圧環境下で培養を行い、各種イオン輸送体、ホルモン受容体のmRNA発現量を測定した。次に硬骨魚の淡水適応ホルモンとして知られているプロラクチンの濃度を変化させた培養液で鰓弁の培養を行い、各種タンパクのmRNA発現量を比較した。その結果、細胞外浸透圧とプロラクチンがそれぞれ独立して鰓の浸透圧調節機能を制御していることが示唆された。この成果は、平成25年5月にメキシコで行われる学会North American Society for Comparative Endocrinologyにて発表する。 次に、塩類細胞の分化について調べるため、二つのチミジンアナログ(IdU・CldU)を用いて実験を行った。本手法ではIdUとCldUを時間差でインジェクションすることで、異なるタイミングで加入した塩類細胞を同時に検出することが可能である。この方法は魚類の鰓ではまだ確立されていないため、まず条件検討をおこなった。本年度はIdUとCldUを同時に検出する方法が確立したため、来年度は移行実験を行う。淡水から海水、海水から淡水に移行したティラピアの鰓を継時的にサンプリングし、イオン輸送体とIdU・CldUの抗体を用いて多重免疫染色することで、塩類細胞の分化の過程の解明を目指す。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請者は平成24年6月から現在に至るまで、新しい技術獲得のためハワイ大学に渡航している。 申請書において、本年度の研究は塩類細胞のライフサイクルに焦点を絞っていたが、渡航先の研究室の影響を受け内分泌系についても着目することにした。このように多面的に研究を進めることができるようになったという点から、申請者は自己評価に(1)を選択した。
|
Strategy for Future Research Activity |
浸透圧・プロラクチン濃度が異なる培養液にて培養した鯛弁を用いて、塩類細胞の各種イオン輸送タンパクに対する抗体を用いた免疫染色を行うことで、細胞外浸透圧とプロラクチンがイオン輸送体の局在に与える影響を検討する予定である。また、塩類細胞の分化過程の解明のため、淡水維持群、海水維持群、淡水→海水移行群、海水→淡水移行群をIdU・CldUで処理し、鯉のサンプリングを行う。塩類細胞のイオン輸送を担うNa+/K+-ATPase, NKCC, NCC, NHE3, CFTRに対する抗体と新たに分化した細胞を検出するIdU, CldU抗体を用いて多重免疫染色を行い、新規塩類細胞の変化を継時的に追っていくことで、塩類細胞分化過程の解明を目指す。
|
Research Products
(2 results)