2012 Fiscal Year Annual Research Report
発現プロファイル解析による植物共生菌分泌タンパク質の共生成立における機能の解明
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12J40172
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
竹本 愛子 (田中 愛子) 名古屋大学, 大学院生命農学研究科, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 共生 / 植物病原菌 / 転写制御因子 |
Research Abstract |
1. トランスクリプトーム解析(RNA-seq)の実施 エンドファイトE. festucae野生株およびproA変異株感染ライグラス葉鞘より全RNAをそれぞれ2サンプル、計4サンプル調製した。共同研究者Barry Scott博士の協力により、Ambry Genetics社に受託し、次世代シークエンサー(イルミナ社HiSeq2000)を用いて、4サンプルの全塩基配列を決定した。マッピングプログラムBWA (Burrows-Wheeler Aligner)を用いて、得られた全配列をE. festucaeのcDNA配列(9360遺伝子)ヘマッピングした。野生株感染サンプルの総リードのうち、0.6%および0.3%(約92万および41万リード)が既知cDNA配列にマップされた。一方、proA変異株感染サンプルの総リードのうち、3.1%および1.2%(約473万リードおよび152万リード)が既知cDNA配列にマップされた。これらの結果は、これまでに知られていたそれぞれの菌株の宿主内バイオマスと一致した。サンプルごとに各cDNA配列にマップされたリード数を算出し、リスト化・正規化した後、野生株と変異株で比較したところ、約400遺伝子の発現レベルが、変異株において1/2以下に低下していることが明らかとなった。 2. クロマチン免疫沈降(ChIP)法を用いたE. festucaeのProAに制御される遺伝子群の解析 E. festucaeの全長ProAとHAタグとの融合タンパク(ProA-HA)発現ベクターを構築し、E. festucaeのproA変異株に導入した。得られた形質転換体を宿主ペレニアルライグラスに接種したところ、proA変異株が、宿主植物を枯死させたのに対して、ProA-HA形質転換体は、野生株と同様な感染様式を示した。この結果は、proA変異株において、proAの欠損により失われていた共生能が、形質転換体ではProA-HAタンパクによつて、相補されていることを示し、ProA-HAタンパクが、タグの付加によらず、本来のProAと同様な機能を有することが明らかとなった。そこで、ProA-HA形質転換体を用いて、ProA-HAタンパクとともに結合したDNA断片を抽出した。リアルタイムPCR法により、抽出したDNA断片中に既知ターゲット遺伝子esdCプロモーター配列が高濃度で存在することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トランスクリプトーム解析(RNA-seq)により、エンドファイトE. festucae野生株が感染したライグラスサンプルと比較し、proA変異株が感染した葉鞘サンプルにおいて、転写量が1/2以下に低下している約400の遺伝子を特定した。また、ProA-HAタンパク質を用いたクロマチン免疫沈降(ChIP)法により、ProAが結合するDNA断片を抽出することに成功した。この結果、ProAターゲット遺伝子群を次年度に同定する道が拓け、期待通り当初の計画に沿った成果を収めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、さらに2つの共生関連変異株(noxAおよびsakA)感染サンプルのRNA-seqを実施予定である。得られたデータの比較解析により、proA遺伝子の下流で機能する遺伝子群のうち、特に重要なものが特定できると期待している。遺伝子破壊法を用いて、特定した下流遺伝子群の共生確立における機能解析を進めるとともに、緑色蛍光タンパク質(GFP)との融合タンパク質を用いた顕微鏡観察により、それぞれのタンパク質の細胞内局在についても調査予定である。
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Research Products
(3 results)