2013 Fiscal Year Annual Research Report
生態的形質と発生機構の共進化と多様化についての理論的解析
Project/Area Number |
12J40187
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
伊藤 洋 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 節足動物 / 形態形成 / 適応進化 / 進化的分岐 / ラグランジュ乗数法 |
Research Abstract |
本研究の目的は、生態的機能を持つ形態形質とその発生機構の進化が動物群集の適応的進化、多様化や群集遷移において果たし得る役割を理論的に明らかにすることであり、以下の3つの解析から成る : 解析(1)形態や行動における適応放散と群集遷移の再現、解析(2)適応放散と群集遷移における生態形質、発生機構の進化的変化と意義についての解析、解析(3)生態的形質と発生機構の共進化を記述し解析するための数学的手法の開発。昨年度は主に解析(1)、解析(3)を行った。それらの実施状況は以下の通りである。解析(1)については、群集進化をシミュレーションするシステムの構築を行った。また、シミュレーションのテストを繰り返すことにより不具合の修正や改良を行った。また、節足動物の形態形成の制約を具体的に調べるために開発したモデルに改良を加え、様々な曲がり方や形状の複数の突起を同時に形成できるようにした。このモデルのシミュレーションにより形成させた角は、特徴的なシワや窪み、断面形状を持つことが多く、それらの形態的特徴と類似した形状が、実際の昆虫においても見つかる。解析(3)については、多次元形質空間における進化動態が制約下にある場合に、それを効率よく解析するための一般的な手法を開発した。その原理は以下の通りである。まず、進化的制約を「複数の形質軸からなる多次元形質空間において、稔性のある変異体が生じにくい方向があること」と定義し、それは形質空間の各位置に固有のものであり、位置の変化に対して滑らかに変化するものとする。次に、注目する集団付近の座標系を局所的に非線形変換することにより、全ての進化的制約を局所的に消失させる(リーマン基準座標系に対応)。後は制約が無いものとして解析すればよい。以上の原理はラグランジュの未定乗数法の形式で表現できるため、実際には座標変換せずに、あたかも制約が存在しないかのように方向進化を解析し、進化的安定点(ESS)や収束安定点、進化的分岐点などを簡単に特定できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
解析(3)は当初の計画以上に進展しており、解析(1)の進展はやや遅れているため、全体としては、おおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は解析(1)及び(2)を集中的に取り組み、適応放散のシミュレーションの本格稼働を可能な限り早期に開始する。解析(2)については、解析のための道具は、解析(3)により既に整っているので、滞りなく進むと期待される。
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