2012 Fiscal Year Annual Research Report
持明院統派皇族間での宮廷文化の相承と変容-京極派歌人伏見院を中心に
Project/Area Number |
12J40200
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
阿尾 あすか 信州大学, 教育学部, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 日本文学 / 中世韻文学 / 和歌 / 京極派和歌 / 持明院統 / 伏見院 |
Research Abstract |
研究計画一・二年目の目的は、京極派歌人としての伏見院像の再構築であり、一年目は伏見院の和歌表現の検討にあった。具体的には、伏見院の和歌表現の解釈と、特徴的な表現の分析である。当該年度は、院自筆歌稿資料の資料的価値の再検討および和歌表現の検討を中心に行った。伏見院自筆の東京国立博物館蔵『伏見院詠草』の資料の再調査を実施した。現在、同詠草の和歌表現の分析と、資料的価値の再検討を行っている。その研究結果は、平成25年夏期までに発表予定である。また、伏見院の歌風研究で得られた成果は、『和歌文学大辞典』の項目執筆にも反映することができた。同辞典は平成25年4月にweb配信されており、平成26年以降には書籍としても刊行予定である。上記以外では、共同執筆で、『花園天皇日記(花園院宸記)』正和二年四月記の注釈および『蒙求和歌』第三類本の翻刻を発表した。前者は、伏見院晩年の持明院統派宮廷の文化および政治状況を知る上での重要資料である。重要人物でありながら殆ど評伝のない二条為基について、評伝をまとめ得たこと、新たな知見を加えられたことは大きな成果である。 後者は、宮廷貴族層における必読書であり、伏見院の和歌にも摂取が多い『蒙求』の注釈書である。研究者は伏見院の歌風研究の立場から翻刻を行った。今後は、伏見院の和歌表現における漢詩文摂取の研究にも着手する予定である。研究者は、当該研究以外に、韓国学中央研究院のプロジェクトで、勅撰和歌集の公共性に関する研究を行った。韓日国際学術会議では、中世日本の宮廷における勅撰和歌集のもつ性格の変容と、公共性の内容について報告を行った。日本学術振興会特別研究員としての研究課題と同一のものではないが、持明院統派宮廷文化の相承と変容を考える上で、勅撰和歌集の性格の変遷は重要であり、同研究の成果は、特別研究員としての研究課題を更に進展させるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、伏見院の和歌資料の資料的価値の検討を行いながら、伏見院の和歌表現について考察を加え、院の和歌表現の傾向や歌風変遷を明らかにする筈であった。平成24年度中には重要資料の作成年次の同定までを完了し、句表現の分析を行っている。伏見院の和歌資料の多くが資料的価値も不明なため、和歌表現の検討に着手するには、その和歌資料の性質と資料的価値の検討から始める必要があった。句表現をも詳細に検討して、全体の傾向まで明らかにすることについては未着手であるため、「(3)やや遅れている」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画を修正して、引き続き伏見院の和歌表現、特に句表現に着目した研究を行うこととする。具体的には、東京国立博物館蔵『伏見院詠草』の句表現、特に『万葉集』の句表現の摂取についての考察を行う。24年度の研究で、同詠草は、大変資料的価値の高いものであることがわかった。計画では、同詠草の作成年次と和歌表現の変遷を詳細に検討すし、伏見院の歌風形成を明らかにする。また、『万葉集』句表現の摂取を検討し、伏見院の『万葉集』愛好の具体的様相を明らかにする。その後、美術的価値の高い和歌資料の検討を行い、当初の研究計画二年目で検討するはずであった伏見院と絵画との影響関係について考える。また、並行して、伏見院と同時代の宗教思想との関わりについても検討してゆく予定である。
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Research Products
(4 results)