2012 Fiscal Year Annual Research Report
微生物が生産するキレート剤を利用したレアメタルおよび放射性物質の回収技術の開発
Project/Area Number |
12J40219
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Research Institution | National Institute for Agro-Environmental Sciences |
Principal Investigator |
篠崎 由紀子 独立行政法人農業環境技術研究所, 生物生態機能研究領域, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 微生物 / シデロフォア / キレート / レアメタル |
Research Abstract |
微生物は生育に必要な鉄を取り込むために、様々な構造の鉄キレート剤(シデロフォア)を種特異的に生産することが知られているが、近年、鉄以外の金属もキレートする例がいくつか報告されている。本研究では、シデロフォアを利用したレアメタルおよび放射性物質の回収技術の開発を最終目的として、今年度は特定の金属をキレートするシデロフォアを生産する微生物の探索を行った。 ある特定の金属に対するキレート作用が強いシデロフォアの生産菌は、結果としてその金属への耐性を有していると予想されるため、このような耐性菌をターゲットとしたスクリーニングを行った。金属としては、レアメタルの中で工業的な使用量が多く比較的単価の高いコバルト、ニッケル、モリブデンを用いた。金属塩いずれか1種類を添加した細菌用の栄養培地に、研究所の圃場から回収した土壌を添加して集積培養を行った。次に、色の変化でシデロフォアの生産を判別できる鉄キレート剤を添加した培地を用い、金属耐性菌として得られた菌株の中からシデロフォア生産菌を選抜した。その結果、10種類の土壌サンプルより、コバルトまたはニッケルまたはモリブデンを添加した培地で生育可能なシデロフォア生産菌をそれぞれ5、9、20株取得した。 このうち、実際に鉄以外の金属をキレートするものを選抜するため、各種金属を配位させたキレート担体を用いて培養上清からシデロフォアの抽出を試みた。その結果、コバルト耐性菌5株のうち3株が生産するシデロフォアがCo^<2+>配位キレート担体により抽出することができ、これらはCo^<2+>をキレートする能力を有していると考えられた。同様にニッケル耐性菌9株のうち1株、モリブデン耐性菌20株のうち2株が、それぞれの金属を配位したキレート担体によって抽出された。これらの結果から、本手法により、鉄以外の金属に対してもキレート作用を示すシデロフォアを取得できることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体の研究計画(以下の(1)~(4))のうち、今年度の目標である(1)が達成されたため。 (1)特定の金属に対してキレート作用が強いシデロフォアの生産菌を自然界から選抜する。 (2)シデロフォアの構造と各種金属に対する結合の強さを解析し、以降の実験に用いるものを選抜する。 (3)排水処理への応用:シデロフォアを固定化したカラム等を作製し、水中から特定の金属を回収可能か検討する。 (4)汚染土壌浄化への応用:シデロフォアを土壌に添加することによる、土壌中からの金属の可溶化や植物体への蓄積量の変化を評価し、シデロフォアによる土壌中の金属の可溶化への寄与を明らかにする。
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Strategy for Future Research Activity |
今回取得したシデロフォア生産菌について、今後はゲル濾過カラムやキレートカラムクロマトグラフィー等、シデロフォア精製法のスケールアップを検討する。次に、大量調製した精製シデロフォアを用いてLC-MSやNMRによる構造解析、および各種金属に対するキレート作用等の詳細な解析を行う。 また、今回のスクリーニング方法により、鉄以外の金属をキレートするシデロフォアの生産菌を効率的に取得できることが分かったため、今後はさらに用いるサンプル(土壌や海水等)および金属の種類を増やして、異なる特性を示す様々なシデロフォア生産菌の取得を行う予定である。
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