2013 Fiscal Year Annual Research Report
微生物が生産するキレート剤を利用したレアメタルおよび放射性物質の回収技術の開発
Project/Area Number |
12J40219
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Research Institution | National Institute for Agro-Environmental Sciences |
Principal Investigator |
篠崎 由紀子 独立行政法人農業環境技術研究所, 生物生態機能研究領域, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 微生物 / シデロフォア / キレート / 金属 |
Research Abstract |
〈背景と目的〉多くの金属類、特にレアメタルは産業上の利用価値が高まる一方で、そのリサイクル技術の開発は進んでおらず、新たな環境汚染の問題が顕在化しつつある。また現在日本では、放射性セシウムやストロンチウム等による低濃度で広範囲に及ぶ環境汚染が深刻化している。 微生物は生育に必要な鉄を取り込むために、様々な構造の鉄キレート剤(シデロフォア)を種特異的に生産することが知られているが、近年、鉄以外の金属もキレートする例がいくつか報告されている。そこで本研究では、シデロフォアを利用したレアメタルおよび放射性物質の回収技術の開発を最終目的として、有用なシデロフォアの探索を行っている。 〈結果〉ある特定の金属に対するキレート作用が強いシデロフォアの生産菌は、結果としてその金属への耐性を有すると予想されるため、このような耐性菌をターゲットとしたスクリーニングを行い、これまでにコバルト、ニッケル、モリブデン、ストロンチウムをそれぞれキレートするシデロフォアの生産菌を取得した。まず、コバルトをキレートするシデロフォアの生産菌12株について、培養上清から粗抽出したシデロフォアを用いて水溶液中のコバルトを回収可能か検討した。その結果を元に、最も高いコバルト回収率を示した菌株を選抜株としてシデロフォアの精製を行い、その分子量をLC/MSにて解析した。一方、16S rDNA解析を行った結果、選抜株はPandoraea属細菌に分類されたが、今回取得したシデロフォアの分子量は、この近縁種で報告されているものとは異なっており、新規のシデロフォアが取得された可能性が高いと考えられた。また、精製したシデロフォアを低濃度のコバルトを含む水溶液に添加した後、疎水性の担体にシデロフォアを吸着させ、メタノールで溶出・回収することにより、添加したシデロフォア濃度に比例してコバルトが回収できることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体の研究計画(以下の①~④)のうち、今年度の目標である②と③が達成されたため。 ①特定の金属に対してキレート作用が強いシデロフォアの生産菌を自然界から選抜する。 ②シデロフォアの構造と各種金属に対する結合の強さを解析し、以降の実験に用いるものを選抜する。 ③排水処理への応用 : シデロフォアを固定化したカラム等を作製し、水中から特定の金属を回収可能か検討する。 ④汚染土壌浄化への応用 : シデロフォアを土壌に添加し、土壌からの金属の可溶化や植物体への金属蓄積量の変化を調べることにより、汚染土壌の浄化にシデロフォアが寄与するか検討を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
取得したシデロフォアが構造未知の新規シデロフォアである可能性が示唆されたため、結晶化条件の検討およびX線結晶構造解析を行う。また、取得したシデロフォアの基本的諸性質として、コバルトや鉄などの各種金属との結合の強さを解析する。この他にも、ニッケル、モリブデン、ストロンチウムをそれぞれキレートするシデロフォアが得られているため、コバルトと同様の方法で水溶液中からそれぞれの金属が回収可能か検討を行う。また、精製したシデロフォアを土壌に添加することにより、土壌中から金属がどの程度可溶化されるか調べる。さらにシデロフォアの添加によって各種金属の植物体への蓄積量がどの程度変化するか調べることにより、シデロフォアの土壌中における働きを評価すると共に、汚染土壌の浄化にシデロフォアが寄与するか検討を行う。
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Research Products
(1 results)