2013 Fiscal Year Annual Research Report
定常的機械刺激が誘起する粉粒体の相分離ダイナミクス
Project/Area Number |
12J40224
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
稲垣 紫緒 千葉大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 非平衡・非線形物理学 / 非平衡散逸系 / 粉粒体物理学 |
Research Abstract |
大きさや形の異なる複数の種類の粉粒体を容器に入れ、機械的刺激によって擾乱を与えた際に誘起される分離現象(segregation)の時空間ダイナミクスについて実験と理論の両面から研究を行う。 水平に置いた円筒容器に大きさや形の異なる2種類の粒子を封入して回転させると、粒子の分離現象が観察される。この分離パターンの時空間ダイナミクスについて、実験と理論の両面から研究を行った。軸周りの回転によって粒子は駆動されているが、軸に平行な向きへの自発的な流れがどのように誘起されるのかについて、特に着目して調べる。これまでの研究で、粉体媒質が円筒の内壁から受けるずり応力が、軸方向の対流に重要であることが示唆される結果を得ており、円筒内部のずり応力のかかり方を変えることによって、粉粒体の分離現象のメカニズムを究明していく。 その結果、予期した以上の成果が得られた。粉体媒質への新たなずり応力の与え方として、円筒の内側と外側からずりを与えるために、円筒容器を二重にして実験を行った。これまでの研究で、一重円筒の容器に2種類の粉粒体をほぼ完全に充填させて回転させた場合には、バンドが進行波として現れることが観察されていたが、今回は2重円筒の間にほぼ完全に粒子を充填して容器を回転させ、バンドが定常的に振動する時空間ダイナミクスを得るのに成功した。また、回転速度と充填率を変えることによって、二重円筒系においても一重円筒系高充填の場合と同様の進行波パターンも生じることが分かった。また、これらの実験結果について、相分離方程式を用いたモデル化も行った。このような振動解は、回転ドラム系に限らず、粉粒体の分離現象において新規の発見であり、どのようなメカニズムで振動が起こるのか、今後さらに巨視的対流に着目して研究を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでの実験をさらに発展させ、実験系を2重円筒容器にすることによって、粉体の分離現象における振動現象を新たに発見した。また、充填率と回転速度を系統的に変えることで、単調緩和や進行波といった、一重円筒で見られるダイナミクスが二重円筒でも起こることが分かった。バンドの速度が位置に依存することから、相分離現象と粉体媒質の巨視的対流のカップリングでバンドのダイナミクスが決まっていることが明らかになった。回転ドラムの分離現象について、メカニズムの理解を深める重要な知見が得られたことから、研究は当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
粒子は回転によって円筒容器の軸に垂直な面内で駆動されているのにもかかわらず、分離した粒子のバンドのダイナミクスは軸に並行して起こる。自発的に粒子が水平な円筒の軸方向に行き来する理由は自明ではない。これまでの知見で、円筒容器内で三層構造を持った時に、円筒軸に平行な巨視的な対流が生じ、円筒容器の一番外側の層でのみ相分離が起こることが分かっている。今後さらに実験を進め、軸方向に粉体媒質の運動を駆動する起源を明らかにし、分離現象の巨視的な時空間ダイナミクスを理解することを目指す。特に、巨視的対流の起源が相分離に駆動されているかどうかについて着目して、研究を進める。 モデル化においては、充高充填の場合に、円筒全体に起こる対流を考慮し、流入・流出を取り入れた、移流項のある一次元Cahn-Hilliard型の方程式を用いて記述するのに成功している。2重円筒容器の場合の振動解については、実験で得られた速度分布を考慮することでダイナミクスの再現に成功した。今後は、離散要素法を用いた数値計算も進める。
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Research Products
(3 results)