2012 Fiscal Year Annual Research Report
オートファジーの始動を制御するATG1キナーゼ複合体の分子機構の解明
Project/Area Number |
12J40279
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Research Institution | Microbial Chemistry Research Foundation |
Principal Investigator |
藤岡 優子 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 特別研究員(RPD)
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Keywords | オートファジー / プロテインキナーゼ / 結晶構造解析 / Atg1 / Atg13 |
Research Abstract |
本研究は、オートファジーの進行に必要なプロテインキナーゼAtg1とAtg13との複合体と、その複合体に結合することによってAtg1の活性化に寄与するAtg17-Atg29-Atg31の3者複合体、さらにはAtg1-Atg13-Atg17-Atg29-Atg31の5者複合体の立体構造解析を行うことによって、その相互作用様式を明らかにし、Atg1のキナーゼ活性の調節メカニズムを解明することを目的としている。 ・Atg1-Atg13複合体の結晶構造解析について ドメイン解析により複合体形成に必要十分な領域に小型化したAtgl-Atg13複合体について、Kluyveromyces marxianus(Km)のホモログを用いることで良質な結晶の作製に成功し、分解能2.5Åで構造決定することに成功した。Atg1のAtg13結合領域はMITドメインが2つ並んだ構造を取っており、N末端側からMIT1およびMIT2と命名した。Atg13のAtg1結合領域はMIT interactingmtif(MIM)が2つ並んだ構造を取っており、N末端側からMIM1、MIM2と命名した。結合領域の詳細な変異体解析を行った結果、Atg1 MIT2-Atg13 MIMl間の相互作用がAtg1-Atg13間の親和性の大部分を担っていること、この相互作用は酵母におけるオートファジーの進行に必須であることが明らかとなった。一方、Atg1 MITI-Atg13 MIM2間の相互作用はAtg1-Atg13間の親和性への寄与は小さかったが、酵母におけるオートファジーの効率的進行には必要であることが明らかとなった。Atg1との親和性を担うMIMIにはリン酸化を受けるSer/Thr残基が存在しないこと、酵母を用いた解析でAtgl3のMIM2下流のC末端領域が飢餓依存的なAtg1-Atg13間相互作用に重要であることが明らかとなったことから、結合部位の直接的なリン酸化ではなく、異なる部位のリン酸化を通してAtg1-Atg13間の相互作用が制御されていることが明らかとなった。 ・Atg1-Atg13-Atg17-Atg29-Atg31の5者複合体の調製と結晶化について Atg13の詳細なドメイン解析の結果、Atg17との結合に関与する領域を二ヶ所同定した。生化学的解析および酵母を用いた解析で、Atg17結合領域のリン酸化がAtg13-Atg17間の相互作用を制御していることを明らかにした。さらに同定した結合領域を用いることで、Atg13-Atg17-Atg29-Atg31四者複合体結晶の調製に成功した。現在四者複合体の構造決定を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度はAtg1-Atg13複合体とAtg17-Atg29-Atg31複合体の調製と結晶化を行うことを目標としていた。上述したように、本年度は小型化したAtg1-Atg13複合体の立体構造を分解能2.5Aで決定し、両者の相互作用の詳細を明らかにした。さらにAtg13-Atg17-Atg29-Atg31複合体の結晶の調製にも成功し、初期構造を得ている。また、構造情報および出芽酵母を用いた機能解析の結果から、飢餓時にAtg13の脱リン酸化を通してAtg1キナーゼ複合体が構築される分子機構の一端を明らかにすることができ、計画以上の進展がみられた。
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Strategy for Future Research Activity |
Atg1のキナーゼ領域の発現は当初から予想されていた通り難航している。様々な組み合わせでの他のAtgタンパク質の共発現、ドメイン解析等を行っているが良好な発現は得られていない。そこで来年度は、大腸菌での発現から、昆虫細胞での発現へ移行することを計画している。 Atg1-Atg13-Atg17-Atg29-Atg31の5者複合体の調製については、現在4者複合体の構造決定を進めており、その構造が得られ次第、最小化した5者複合体を設計し、その調製と結晶化へ着手していきたいと考えている。
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