2013 Fiscal Year Annual Research Report
オートファジーの始動を制御するATG1キナーゼ複合体の分子機構の解明
Project/Area Number |
12J40279
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Research Institution | Microbial Chemistry Research Foundation |
Principal Investigator |
藤岡 優子 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 特別研究員(RPD)
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Keywords | オートファジー / X線結晶構造解析 |
Research Abstract |
Atg1はオートファジー関連タンパク質の中で唯一のタンパク質キナーゼであり, オートファジーを制御する中心的因子の一つである. これまでに, Atg1のキナーゼ活性がAtg13との結合によって制御されているという報告があるものの, その詳細な分子メカニズムは依然不明である. 本研究は, Atg1とAtg13との複合体と, その複合体に結合することによってAtg1の活性化に寄与するAtg17-Atg29-Atg31の3者複合体, さらにはAtg1-Atg13-Atg17-Atg29-Atg31の5者複合体の立体構造解析を行うことによって, その相互作用様式を明らかにし, Atg1のキナーゼ活性の調節メカニズムを解明することを目的としている. 昨年度に報告した通り, これまでに小型化したAtg1-Atg13複合体について, Kluyveromyces marxianusのホモログを用いることで良質な結晶の作製に成功し, 分解能2.2Åで立体構造を決定した. 昨年度作製したAtg13-Atg17-Atg29-Atg31の4者複合体結晶については, 今年度放射光施設にて良好なデータを取得し, 分解能3.2Åで立体構造を決定した. その結果, Atg13が2か所の短い領域を用いて, 弓状構造を取るAtg17上の, 距離的に離れた2か所の結合ポケットにそれぞれ結合して多量体を形成することを明らかにした. この立体構造中にはAtg1は含まれていないが, Atg1は二量体化することでその活性を上昇させることが知られており, Atg13とAtg17を介した多量体化が, 結果的にAtg1の二量体化を促進し, その活性を上昇させるという仮説も考えられる. 引き続き生化学的解析も行った. 等温滴定型カロリメトリーを用いた相互作用解析や, 出芽酵母から精製したAtg13のマススペクトル解析等の多面的な解析によって, Atg13のAtg1への結合は, 結合領域に集積したセリン残基のリン酸化によって制御されていることが明らかとなった. また, Atg13のAtg17への結合は, Atg17結合領域にあるSer379とSer429のリン酸化によって制御されていることを突き止めた. これらの結果から、飢餓によるAtg13の脱リン酸化が, オートファゴソーム形成の足場であるPAS (pre-aut。phagos。malstructure)の形成, さらにはオートファジーの始動を引き起こす分子機構の一端が明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Atgl-4Atg13複合体とAtg13-Atg17-Atg29-Atg31複合体のX線結晶構造解析を計画していたが, 計画通り複合体の立体構造解析を行うことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
Atgl-Atg13-Atg17-Atg29-Atg31の5者複合体X線結晶構造解析を計画していたが, 最近脱リン酸化したAtg13かAtg17の二か所に結合することによって, Atg17が凝集するという現象を発見した. この発見は5者複合体の結晶化が本質的に困難であることを示唆しているが, PASの形成機構そのものを表している可能性があり, 詳しく調べることによってオートファジー開始の分子機構を明らかにできると考えている. そこで今後は予定を変更して, 高速原子間力顕微鏡を用いて複合体の形成過程を可視化する予定である.
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Research Products
(3 results)