2013 Fiscal Year Annual Research Report
グリーンイノベーションにおける国際競争と協働に関する研究:日本と中国を事例として
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12J40280
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
姜 娟 政策研究大学院大学, 政策研究科, 特別研究員研究員(RPD)
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Keywords | 特許データベース / 技術軌道 / 環境規制 / ポーター仮説 / 特許の質 / 前方引用 / パテントファミリー / 電気自動車 |
Research Abstract |
今年度は今までの技術クラスター分析に加えて、技術の質を定量的に評価する独自の特許データバンクを構築することができた。 PATSTATを用いてINPADOC Familyのデータベースと連結することにより、米国特許局に申請された全ての特許における最初の出願人が判別可能になった。さらに特許引用情報との連結により、個々の特許に対する質の評価を計ることが可能となった。これらの基礎的作業の達成により、データバンクを利用して規制や各種政策の実施がグリーン・イノベーションの量及び質に与えたインパクトを、経済計量学の手法を用いて定量分析する方法を開発した。 具体的な事例として、1990年代初頭の米国・カリフォルニア州において、州内で一定台数以上の自動車を販売するメーカーは、その販売台数の一定比率を、排出ガスを一切出さない電気自動車や燃料電池車にしなければならないと定めたZEV (Zero Emission Vehicle)規制が制定された。この規制によって指定された自動車メーカーのハイブリッドを含む電気自動車の開発がどのぐらいのインパクトを受けたかについて、特許の質の変化を用いて証明することに成功した。同時にそれらの政策が産業の育成や技術の軌道に与えた影響も量的に評価され、その結果関連する個々の企業の研究開発のマネージメント方法や、その背後にある政策的、イノベーション・システム的、歴史的、文化的、制度的な原因の解明と連結への道筋を開くきっかけとなった。 これらによりグリーン・イノベーションを促進するために、政策はいかに設計されるべきか、という問題に対する重要な示唆を得ることができた。 また昨年度『研究技術計画』・26巻3/4号に掲載された論文「日本の環境技術の国際競争力に関する再考」が今年度の第28回年次学術大会研究・技術計画学会において優秀論文賞を受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
技術の質を定量的に評価する、独自の特許データバンクが構築できたので、さらなる高度な実証研究が可能になりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
特許データと企業の財務データとを連結させることに挑戦しつつ、更なるミクロレベルのデータセットを構築し、グリーン・イノベーションを起こす決定要因を検討する。既存の成熟した産業における技術軌道を変更するようなグリーン・イノベーションでは、企業規模・景気と比較して、政策誘導がどの程度重要な要因であるかを明らかにしなくてはいけない。日本と中国がグリーン・イノベーションを実現するための技術力及び制度力を測定するだけでなく、技術移転や、R&Dの国際展開、国際的協働研究開発プログラムの企画などに科学的エビデンスを提供することを目指す。
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Research Products
(2 results)