2012 Fiscal Year Annual Research Report
半導体電子ドットにおける多励起子状態のエネルギー構造に関する研究
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12J56262
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
嵐田 雄介 東京工業大学, 大学院・理工学研究科(理学系), 特別研究員(DC2)
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Keywords | 物理学 / 光物性 / 顕微分光 / 半導体 / 量子ドット / 励起子 / 単一電子スピン / 非古典光源 |
Research Abstract |
半導体量子ドット(QD)の内部に励起される多電子正孔系(多励起子状態)は、QDのエネルギースペクトルや光学過程に大きく影響する。本研究では、クーロン相互作用による多体効果を考慮し、量子ドットのエネルギー構造やスピン状態の特定、スピン緩和時間の測定法の提案および実験を行なった。 GaAs QDを含む半導体試料を8Kに冷却し、顕微分光法により、単一QDの発光を観測した。励起光は光子エネルギー3.0eVのパルスレーザーを用いた。QDに励起された多励起子状態は、電子正孔を1対ずつ段階的に再結合させながら、その度に光子を放出する。そのような時間的相関のある光子群を検出するために強度相関法による測定を行なった。また、光学顕微鏡に偏光光学系を組み込むことで、光子の偏光にも感度を持った測定を行ない、多励起子状態のスピンに関する議論を行なった。 今回、電子3個、正孔4個の結合状態である荷電3励起子分子に着目し、そのスピン状態やスピン緩和過程に着目して実験を行なった。荷電3励起子分子は7個のキャリアからなる。そのため、発光の偏光を見ることでスピンに関する議論が可能である。また、荷電3励起子分子は発光過程で3光子を放出するため、情報量が多い利点がある。偏光強度相関測定の結果、荷電3励起子分子の発光過程で生じる3光子間には円偏光の相関を持つことが観測された。これは、荷電3励起子分子が3度の光学遷移を行なう間は、スピンが保たれていることを意味している。また、円偏光が良い基底になっていることは、電子正孔間の交換相互作用を考慮することで説明することができた。この実験では、観測された偏光相関の度合からスピン緩和時間を求めることが可能であり、GaAs量子ドット内の単一電子スピンの緩和時間は4.1ns,単一正孔スピンに対しては0.7nsという値が得られた。同一の系から単一の電子、正孔両方のスピン緩和時間を測定したのは本実験が初めてである。
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Research Products
(6 results)